キノ・プラウダ

『キノ・プラウダ』：映画を通じて伝える真実

『キノ・プラウダ』（ロシア語: Кино-Правда）は、1922年6月から公開されるニュース映画のシリーズで、ジガ・ヴェルトフ、エリザベータ・スヴィロワ、ミハイル・カウフマンという3人の製作者によって制作されました。本シリーズは全部で23巻にわたり、ヴェルトフにとっても自身の初の映像作品であり、後の長編映画にも影響を与える手法が見受けられます。

主に1920年代の活動に焦点を当てているヴェルトフは、「キノ・プラウダ」という言葉を通じて「映画＝真実」という概念を提唱しました。彼の理論によると、現実の断片を映し出すことで、肉眼では捉えきれない深い真実が浮かび上がるとされています。

日常の断片を捉えた真実

『キノ・プラウダ』では、日常生活に密着した様々な経験を描き出すことを重視しました。ブルジョア的な関心を排し、生活の中の多様な場面を取り上げています。市場や酒場、学校などの様子を映し出し、時には隠しカメラを用いて事前に了承を得ずに撮影することもありました。

このシリーズのエピソードは一般に再現や演技を使用せず、ドキュメンタリー的なアプローチが取られています。例外として、社会革命党員の裁判に関連する映像では、一部演出が施されることもありました。街中で新聞が売られるシーンや、路面電車内で新聞を読む人々の様子などがその例です。

撮影技法は単純かつ機能的であり、余計な技巧は排除されています。23巻にわたるこのシリーズは3年間にわたり制作され、各巻の長さはおおよそ20分で、通常は3つの異なるテーマが扱われる形になっています。内容は物語的よりも描写的であり、農民のコミューンへの組織化や、社会革命党の裁判、さらには新生マルクス主義国家における飢餓の状況を取り上げるなどしています。

プロパガンダと批評

作品にはプロパガンダ的要素も見受けられますが、特に顕著なものではありません。たとえば、空港建設を扱ったエピソードでは、過去の白軍の戦車が地ならしに使われる様子が映され、「労働者戦線の戦車」というインタータイトルが登場するなど、意図的なメッセージが込められています。

ヴェルトフは、観眾との活発なコミュニケーションを意図しており、シリーズの最後には連絡先が明示されていましたが、14巻目以降はその実験性が強まり、一部の批評家からは「正気を失っている」という厳しい評価を受けることもありました。

キノ・プラウダの意義

『キノ・プラウダ』という名称はロシア語で「映画＝真実」という意味を持ちますが、フランス語の「シネマ・ヴェリテ」とは異なる運動であることに注意が必要です。シネマ・ヴェリテは1960年代のフランスで流行したドキュメンタリー手法であり、現実の「醜い細部に至るまで」を捉えるという点では似通っているものの、キノ・プラウダの理念や背景とは異なります。

『キノ・プラウダ』は、映画が持つ力を通して現実を深く掘り下げ、その真実に視聴者を引き込む作品であり、伝説的な影響を残しました。現代においても、ドキュメンタリー映画の重要な美学や理念として位置づけられています。

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