キボトシュの戦い

キボトシュの戦い（ドラコンの戦い）

キボトシュの戦い、またはドラコンの戦いは、1096年10月21日に民衆十字軍がルーム・セルジューク朝軍によって壊滅的な打撃を受けた戦闘です。この戦いは、十字軍の拙速な行動と、敵の巧妙な策略が組み合わさった結果、悲劇的な結末を迎えました。

戦いの背景

民衆十字軍は、熱狂的な宗教的信念に駆り立てられたものの、軍事的な訓練や組織を欠いていました。彼らは、正規の軍隊を待たずに聖地奪還を目指し、先に進軍を開始しました。しかし、その無謀さは早くも露呈することとなります。

クセリゴルドン包囲戦からの展開

先に起きたクセリゴルドン包囲戦において、民衆十字軍のうちドイツ人集団はすでに壊滅していました。残るは、ニカイアを目指していたフランス人集団でした。この状況を利用し、ルーム・セルジューク朝は十字軍を罠にかけるための策略を練ります。

セルジューク朝の策略

セルジューク朝は、トルコ人のスパイを2人送り込み、「クセリゴルドンを陥落させたドイツ人がニカイアも制圧した」という偽情報を流しました。これにより、十字軍内部に動揺と焦りが生じ、ニカイアへの到着を急ぐ者が現れました。また、ニカイアへの道中には伏兵が配置され、十字軍を待ち構えていました。

戦闘の経過

指導者の不在と独断的な行動

十字軍の指導者の一人であった隠者ピエールは、補給のためにコンスタンティノープルへ戻っていました。他の指導者たちはピエールの帰還を待つべきだと主張しましたが、ジョフロワ・ビュレルはそれを臆病だと非難し、即時の攻撃を主張しました。彼の意見が受け入れられ、10月21日の朝、十字軍全軍約2万人がニカイアに向けて出発しました。ただし、女性、子供、老人、病人は宿営地に残されました。

ドラコン村での待ち伏せ

宿営地から約3マイル離れたドラコン村付近で、十字軍は狭く木々が生い茂る谷間に入り込みました。そこで待ち受けていたのは、セルジューク朝軍による容赦ない矢の一斉射撃でした。この攻撃により、十字軍はパニックに陥り、数分のうちに総崩れとなりました。多くが殺戮され、残りの兵士たちは宿営地へと敗走しました。

悲惨な結末

戦いでの死者数は6万人以上とも記録されていますが、女性、子供、そして投降した者たちは命を助けられました。ジョフロワ・ビュレルを含む約3千人の生き残りは、近くの廃城に逃げ込みました。その後、東ローマ帝国軍が船で到着し、包囲が解かれ、生き残った人々はコンスタンティノープルへと帰還しました。

戦いの影響

キボトシュの戦いは、民衆十字軍の無謀さと、セルジューク朝の巧妙な戦略を浮き彫りにしました。この戦いは、十字軍運動の初期における悲劇的な出来事として歴史に刻まれ、その後の十字軍の展開にも大きな影響を与えることとなりました。

この戦いは、軍事的な準備の重要性、情報戦の有効性、そして指導者の判断がいかに戦局を左右するかを如実に示した例と言えるでしょう。

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