キム・キャンベル

キム・キャンベル（Avril Phaedra Douglas Campbell）

キム・キャンベルは、1947年3月10日にカナダ、ブリティッシュコロンビア州のポート・アルバーニで生を受けた政治家です。本名はアヴリル・フェイドラ・ダグラス・キャンベルですが、カナダ国内では広くキム・キャンベルとして認識されています。彼女は、カナダの政治史において特筆すべき人物であり、同国初、そして現時点では唯一の女性首相として歴史にその名を留めています。

若年期と学業

キャンベル氏は、生誕地であるブリティッシュコロンビア州で育ち、その地にあるブリティッシュコロンビア大学で教育を受けました。同大学の学部および大学院を修了した後、さらなる学究のため英国へ渡り、名門ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで博士課程に在籍しましたが、こちらは課程途中で終えることとなりました。

連邦政界への進出と要職

連邦議会に活動の場を移したキャンベル氏は、カナダ政府内でいくつかの重要なポストを経験しました。1990年から1993年にかけての期間、彼女はカナダにおいて初めて女性が就任する司法大臣および法務長官の任にあたりました。この在任中、キャンベル氏は国内の法制度に大きな影響を与える取り組みを推進し、特に銃規制や、性的な暴行に関する刑法分野での改正作業に深く関わりました。

続く1993年には、短期間ですが退役軍人大臣を務めた後、国防大臣に任命されました。この国防大臣という役職においても、彼女は新たな歴史を刻みます。北大西洋条約機構（NATO）の加盟国において、女性が国防の責任者を務めるのは彼女が初めてのことでした。これは、女性の社会参画、特に従来男性中心と考えられてきた分野における可能性を示す象徴的な出来事でした。

首相への昇り詰め、そして短命政権

1993年6月、進歩保守党の党首選で勝利を収めたキャンベル氏は、ブライアン・マルルーニー前首相の後継として、カナダの第19代首相に就任しました。これにより、彼女はカナダ史上初の女性首相という輝かしい称号を得ることとなり、その誕生は国内外から大きな注目を集めました。

しかし、その首相としての道のりは極めて短いものとなりました。就任から数ヶ月後の1993年秋に実施されたカナダ下院総選挙において、キャンベル氏が率いる進歩保守党は、歴史的な大敗北を喫しました。選挙前には169議席を有していたにも関わらず、選挙後の議席数はわずか2議席にまで激減するという壊滅的な結果に終わったのです。この選挙の波に乗り、キャンベル氏自身も自身の選挙区で議席を失い、落選しました。

この結果を受け、キャンベル政権はわずか約4ヶ月半という短期間で終わりを迎え、政権の座は自由党を率いるジャン・クレティエン氏に引き継がれることとなりました。

その後の活動

首相を退任した後、キャンベル氏は直接的な政界の第一線からは身を引きましたが、様々な分野で活動を続けています。国際的なフォーラムでの議論参加や、ガバナンス、リーダーシップに関する提言などを行っています。また、国家の元首脳として、公的な儀典に招かれることもあり、2022年9月には、他のカナダ元首相たちと共に英国で開催されたエリザベス2世女王の国葬に参列しました。

キム・キャンベル氏の政治キャリアは、カナダ初の女性首相という偉大な一歩を印した一方で、総選挙での党の歴史的な敗北という劇的な幕引きを迎えた点が特徴的です。彼女の短い首相在任期間は、カナダ政治の複雑な一時期を反映したものと言えますが、女性リーダーの可能性を示した人物として、その存在はカナダ史において重要な意味を持ち続けています。

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