ジャン・クレティエン

ジョゼフ・ジャック・ジャン・クレティエン（1934年1月11日 - ）は、カナダの政治家であり、第26代首相（1993年11月4日 - 2003年12月12日）を務めました。彼はカナダ自由党に所属し、その政治キャリアを通じて、ピエール・トルドーのバイリンガリズム（二ヵ国語政策）と多文化主義を継承し、ケベック独立を回避することでカナダの連邦維持に大きく貢献しました。

生い立ちと初期のキャリア

クレティエンは、ケベック州シャウィニガンで、ウェリー・クレティエンと妻マリーの間に生まれた19人兄弟の18番目の子として育ちました。彼は自身の出自を「ショーウィニガンの小さな男」と謙虚に表現しました。幼少期にはベル麻痺を患い、顔面の左側に麻痺が残りましたが、彼はそれを逆手に取り、自由党の党首選キャンペーンでは「口の両側で話さない政治家」と自称しました。また、彼は片耳の聴力を完全に失っています。ラヴァル大学法学部を卒業後、1958年に弁護士となりました。

政治家としてのキャリア

1963年、クレティエンはカナダ下院議員に初当選し、政界でのキャリアをスタートさせました。その後、内国歳入大臣、インディアン問題・北部開発大臣、財務庁長官、通産大臣、大蔵大臣など、数々の要職を歴任しました。

1980年のケベック独立国民投票では、連邦制を支持する側の代表的な人物として活躍しました。同年には法務大臣、司法長官に任命され、社会開発担当、憲法問題担当大臣も兼任しました。特に、カナダ憲法の確定プロセスにおいては、「キッチン合意」の代表交渉担当者として重要な役割を果たしました。その後、エネルギー・鉱業資源大臣も務めました。

自由党党首、そして首相へ

1984年に自由党の党首であり首相であったピエール・トルドーが引退を表明した後、ジョン・ターナーが党首となり首相に就任しました。クレティエンは副首相、外務大臣に任命されましたが、間もなく辞職しました。ターナーの辞職後、クレティエンは自由党党首となり、下院議員として政界に復帰しました。

1993年の総選挙で自由党は勝利し、クレティエンは首相に選出されました。1997年、2000年と再選を果たし、カナダ政治史上まれに見る3期連続で首相を務めることになりました。

首相としての業績

クレティエンの首相在任中、最大の課題はケベック独立問題でした。1995年のケベック独立国民投票が僅差で否決されたことを受け、カナダからの独立を目指すケベック州政府の動きに対し、明確化法を制定しました。この法律により、「カナダ政府は、独立の是非を問う『明確な質問』に対する州民の『明確な賛成』の意思表示がない限り、ケベック独立宣言を認めない」という方針が決定されました。カナダ最高裁判所は、単なる過半数の賛成では条件を満たさないと判断しました。

クレティエン政権は、アメリカ同時多発テロ事件後の対テロ戦争への支持とアフガニスタン侵攻への協力は行ったものの、2003年のアメリカのイラク侵攻には参加しませんでした。クレティエンは「国連安全保障理事会での決定がないことが理由であり、カナダはあくまで平和的解決策を探るべきである」との見解を示しました。

退任後

2003年11月、クレティエンは次の自由党党首選への不出馬を表明し、12月に首相を退任しました。

2004年には、クイーンズ大学から法学博士号を授与されました。

2023年、日本政府より令和5年春の叙勲において、旭日大綬章が贈られました。

クレティエンは、カナダの政治において重要な役割を果たし、そのリーダーシップは今もなお評価されています。

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