キャサリン・ドレクセル

キャサリン・ドレクセル：信仰と慈善の生涯

1858年、アメリカ合衆国ペンシルバニア州フィラデルフィアで生まれたキャサリン・ドレクセルは、オーストリア系移民の裕福な家庭に育ちました。両親は敬虔なカトリック信者であり、積極的に慈善活動を行い、自宅を貧しい人々のための避難所として開放していました。この恵まれた環境と両親の行動は、キャサリンの心に深く刻まれ、後の彼女の人生に大きな影響を与えます。

幼少期から、フィラデルフィアの街で起きていた貧困や略奪といった社会問題を目の当たりにしたキャサリン。1861年から1865年にかけて勃発した南北戦争は、彼女の心に深い傷を残しました。その後、父と共にアメリカ大陸を横断する旅に出た際に、先住民や元奴隷であるアフリカ系アメリカ人が、差別と貧困、権利の剥奪に苦しむ姿を見て、彼女は大きな衝撃を受けました。この旅は、彼女の人生の方向性を決定づける転機となったのです。

旅の後、キャサリンは父親を亡くします。義母の介護を通して、彼女は自身の特権的な立場を改めて認識し、社会貢献への強い意志を固めていきました。そして、父親から相続した莫大な財産を、先住民やアフリカ系アメリカ人の支援に充てることを決意します。宣教師としての道を歩むことを誓い、1891年には「聖体修道女会」を設立しました。

聖体修道女会を通じて、キャサリンは先住民、特にスー族の人々の生活改善と教育に尽力しました。スー族の酋長らとの信頼関係を築き、救援活動を行い、教会や学校を設立することで教育の機会を提供しました。また、アフリカ系アメリカ人の教師を雇用し、給与を支払うなど、人種差別的な社会構造に立ち向かう活動も展開しました。1942年までに、彼女の活動は広範なネットワークを形成し、多くの地域社会に貢献することとなります。

特に画期的なのは、アメリカ合衆国で初めてとなるアフリカ系アメリカ人向けの大学、ザビエル大学をニューオーリンズに設立したことでしょう。この大学は、多くの黒人大学生を輩出し、社会進出を支援する役割を果たしました。しかし、彼女の活動は常に困難に満ちていました。白人至上主義団体クー・クラックス・クラン（KKK）からの脅迫など、人種差別からの抵抗に遭遇することも少なくありませんでした。それでも、キャサリンは信念を曲げることなく、活動を継続しました。

1955年、96歳で生涯を閉じたキャサリン・ドレクセル。彼女の死後、アメリカ国内には63校もの学校が残り、500名以上の修道女たちが彼女の遺志を継いで教育活動に携わっていました。2000年、ローマ教皇ヨハネ・パウロ2世によって列聖され、聖女として敬われています。彼女の生涯は、信仰と慈善の精神を体現した、輝かしいものだったと言えるでしょう。

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