キャセイ・パシフィック航空700Z便爆破事件

キャセイ・パシフィック航空700Z便爆破事件

1972年6月15日、キャセイ・パシフィック航空の700Z便が、シンガポール発バンコク経由香港行きのフライト中に空中爆破し、乗員10名、乗客71名全員が死亡するという痛ましい事件が発生しました。この事件は、当時ベトナム戦争の影響下にあった南ベトナム上空で起こり、国際的な関心を集めました。

事件の概要

事故機はコンベア880型機（登録記号VR-HFZ）で、バンコクを離陸後、高度8840メートル、時速648キロメートルで飛行中、突然空中爆発を起こしました。この空域は、ベトナム戦争の影響で軍用機の優先空域となっており、民間機は監視体制を敷いて飛行していました。しかし、午後2時ごろ、700Z便はサイゴン（現ホーチミン市）から約300キロメートル離れたプレイクのジャングルに墜落しました。

犠牲者には様々な国籍の人々が含まれており、特に日本人17名が犠牲となりました。その中には、東南アジアへの研修旅行からの帰路にあった群馬県のプロパンガス販売業者の一行12名が含まれており、地域社会に大きな衝撃を与えました。

事故原因の究明

当初、事故原因はアメリカ軍機の誤射や、地対空ミサイルによる撃墜の可能性も疑われました。事故当時、付近にはアメリカ軍機が7機飛行しており、ベトコンが発射したミサイルが誤って命中した可能性も否定できませんでした。しかし、詳細な調査の結果、機内から外側へ向かって破片が飛び散った痕跡が発見され、機内での爆発が原因であると特定されました。

フライト・データ・レコーダーの解析により、貨物室に仕掛けられた爆弾が爆発し、その衝撃で座席が機外へ飛び出し、垂直尾翼と右翼の燃料タンクを破壊したことが判明しました。これにより、火災が発生し、コントロールケーブルも損傷、機体は操縦不能に陥り、分解しながら高速で墜落したと考えられています。

被疑者の逮捕と裁判

タイの捜査機関は、保険金詐取目的で婚約者とその娘のスーツケースに爆弾を仕掛けたとして、タイ警察の大尉を逮捕・起訴しました。しかし、裁判では有罪を立証することができず、大尉は2年後に無罪となりました。

この事件は、航空機の安全対策の重要性を改めて認識させ、国際的な航空テロ対策強化のきっかけとなりました。また、犠牲者の遺族にとっては、決して癒えることのない深い悲しみを残しました。

関連項目

航空機テロ・破壊行為の一覧
ベトナム戦争
生命保険

外部リンク

Airliners.net　事故飛機VR-HFZの写真
Aviation Safety.Net
Newspaperarchive.com 事故を伝える当時の英字新聞

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