キャッシュ・フロー計算書

キャッシュ・フロー計算書とは

キャッシュ・フロー計算書（C/F）は、企業における一定期間の現金の流れを示す財務諸表です。損益計算書（P/L）が収益と費用を計上するのに対し、キャッシュ・フロー計算書は現金の増減を直接的に記録します。これにより、企業の資金繰り状況や支払い能力をより正確に把握することができます。

キャッシュ・フロー計算書の重要性

損益計算書は発生主義に基づいており、収益と費用を計上するタイミングが必ずしも現金の動きと一致しません。そのため、損益計算書上では利益が出ていても、実際には現金が不足して倒産する、いわゆる黒字倒産が起こることがあります。キャッシュ・フロー計算書は、このような損益計算書の限界を補い、企業の現金の流れを明確にすることで、より正確な財務状況の評価を可能にします。

キャッシュ・フロー計算書の目的

キャッシュ・フロー計算書の主な目的は以下の2点です。

1. 企業の現金創出能力と支払い能力の評価:
企業がどれだけ現金を生み出す力があるのか、また、債務や配当金を支払う能力があるのかを評価します。
2. 利益の質の評価:
損益計算書上の利益が、実際にどれだけ現金を生み出しているのかを評価します。

キャッシュ・フロー計算書の歴史

欧米諸国では1980年代後半から1990年代初頭にかけてキャッシュ・フロー計算書の作成が制度化され、日本でも2000年3月期から上場企業で作成が義務付けられました。現在では、貸借対照表（B/S）と損益計算書に次ぐ、第3の主要な財務諸表として位置づけられています。

キャッシュ・フロー計算書の評価

機関投資家などは、企業の評価において、利益だけでなく現金創出力（特にフリー・キャッシュ・フロー（FCF））を重視する傾向にあります。これは、企業の持続的な成長のためには、現金の創出能力が不可欠であるという考えに基づいています。しかし、近年では企業価値評価にFCFを直接的に使用することの妥当性についての評価は定まっていません。

キャッシュ・フロー計算書における「資金」の範囲

キャッシュ・フロー計算書における「資金」とは、現金および現金同等物を指します。

現金: 手元現金、要求払預金（普通預金や当座預金など）
現金同等物: 容易に換金可能で、価値変動リスクの低い短期投資（3ヶ月以内の定期預金、譲渡性預金、コマーシャルペーパーなど）

現金と現金同等物間の取引は、キャッシュ・フロー計算書には表示されません。

キャッシュ・フロー計算書の3つの区分

キャッシュ・フロー計算書は、企業の活動を以下の3つに区分して表示します。

1. 営業活動によるキャッシュ・フロー:
企業の主要な事業活動による現金の増減を示します。損益計算書の税引前当期純利益をベースに、非資金損益項目の調整や、運転資本の増減を調整して計算します。直接法と間接法がありますが、どちらの方法でも結果は同じになります。
2. 投資活動によるキャッシュ・フロー:
固定資産や有価証券の取得・売却など、投資活動による現金の増減を示します。
3. 財務活動によるキャッシュ・フロー:
借入金の増減や株式の発行など、財務活動による現金の増減を示します。

直接法と間接法

営業活動によるキャッシュ・フローの作成には、直接法と間接法の2つの方法があります。

直接法: 現金収支に収益・費用を直接関連付けて計算する方法。キャッシュ・フローに対する収益・費用の関連性が明確になる一方、実務が煩雑になるという難点があります。
間接法: 損益計算書の税引前当期純利益から、非資金損益項目や運転資本の変動を調整して計算する方法。直接法に比べて作成が容易であるため、実務では間接法が用いられることが多いです。

キャッシュ・フロー計算書の意義と分析

キャッシュ・フロー計算書を分析することで、以下の点を把握することができます。

企業の現金創出力
資本の活用方針
借入金返済能力
外部資金への依存度
収益の質と量

これらの情報を総合的に判断することで、企業の財務状況をより深く理解することができます。

関連項目

キャッシュ・フロー
キャッシュ・フロー評価
企業会計
国際会計
財務諸表
貸借対照表
損益計算書
簿記検定
公認会計士
財務省
税理士
商学部
経営学部

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