キャッツ・アイ (1985年の映画)

キャッツ・アイ (Cat's Eye)

1985年にアメリカ合衆国で制作されたホラー映画『キャッツ・アイ』は、恐怖小説の大家スティーヴン・キングが原作と脚本を手がけ、『クジョー』や『トレマーズ』などの作品で知られるルイス・ティーグが監督を務めた作品です。この映画は、それぞれ独立した三つの怖い物語で構成されるオムニバス形式を採用しており、特筆すべきはその全体が一匹の不思議な猫の視点を通じて描かれている点です。この猫は単なる傍観者ではなく、物語において重要な役割を果たします。残念ながら、日本では劇場での正式な公開は見送られましたが、その後ソフト化され、多くのホラーファンに鑑賞されることとなりました。

各話のあらすじ

この映画を構成する三つの物語は、それぞれ異なるテーマと恐怖を描いています。

第一話：Quitters, Inc.

長年の喫煙習慣から抜け出せずにいる主人公ディックは、友人からの紹介で「クイッターズ社」という禁煙治療機関を訪れます。この機関は100%の禁煙成功率を誇ると評判でしたが、その治療法は想像を絶する過酷なものでした。一度でも煙草を吸った場合、本人だけでなく、彼の愛する家族にも容赦ない罰が科せられるのです。ディックは喫煙衝動と恐ろしい罰への恐怖の間で精神的に追い詰められていきます。ジェームズ・ウッズがディックを、アラン・キングが冷酷なクレスナー社の責任者ヴィニー・ドナッティ博士を演じています。

第二話：The Ledge

プロテニス選手のジャーニーは、大富豪クレスナーの若く美しい妻との不倫が露呈し、クレスナーの激しい怒りを買います。復讐に燃えるクレスナーは、ジャーニーに対し、自身の高層オフィスビルの、幅わずかな外壁の突出部を一周するという「死のゲーム」を強要します。高所恐怖症のジャーニーは極度の恐怖と戦いながら命がけの挑戦を強いられますが、物語はクレスナー自身にとって思いもよらない、皮肉な結末を迎えます。ロバート・ヘイズがジャーニーを、ケネス・マクミランが復讐に囚われたクレスナーを演じます。

第三話：The General

幼い少女アマンダは、ベッドの下に潜む不気味な存在に怯えています。その正体は、異世界から現れ、子供たちの魂や生命力を吸い取るという恐ろしい小鬼でした。小鬼はアマンダを次の標的として襲い掛かりますが、そこにアマンダが拾い、後に「将軍（ジェネラル）」と名付けられることになる一匹の猫が現れます。この猫は単なるペットではなく、アマンダを守るため、邪悪な小鬼に対し勇敢に立ち向かうのです。この猫こそが、これまでの二つの物語を通りがかりに見つめていた存在であり、最終的にアマンダは彼の助けを得て小鬼に立ち向かいます。少女アマンダ役は、若手注目株として頭角を現し始めていたドリュー・バリモアが演じており、彼女は物語の冒頭にも謎めいた少女として登場し、全体を繋ぐ役割も果たしています。アマンダの両親役として、キャンディ・クラーク（母サリー）とジェームズ・ノートン（父ヒュー）が出演しています。

キャスト

謎の少女 / アマンダ：ドリュー・バリモア
ディック・モリソン：ジェームズ・ウッズ
ヴィニー・ドナッティ博士：アラン・キング
ジャーニー・ノリス：ロバート・ヘイズ
クレスナー：ケネス・マクミラン
サリー：キャンディ・クラーク
ヒュー：ジェームズ・ノートン
シンディ：メアリー・ダーシー
* その他：ジェームズ・レブホーン、チャールズ・S・ダットン、マイク・スター など

『キャッツ・アイ』は、キング独特の日常に潜む恐怖や、人間の欲望、弱さを描いたストーリーテリングが見どころであり、特に第三話のファンタジックながらも不気味なクリーチャー描写は印象的です。一匹の猫がそれぞれの物語を繋ぐというユニークな構成も、作品に独特の味わいを与えています。

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