キャロン・ウィーラー

キャロン・ウィーラー（Caron Wheeler）は、1963年1月19日にロンドン・アクトンで生まれたイギリスのR&B女性歌手です。彼女はジャマイカ系のバックグラウンドを持ち、特に音楽的な家庭で育ちました。父親はジャマイカ出身のベーシスト、母親もシンガーという環境が、後の彼女の音楽キャリアに大きな影響を与えたと考えられます。

彼女の音楽への第一歩は非常に早く、わずか12歳でブリティッシュ・レゲエの女性トリオ「ブラウン・シュガー」に参加したことから始まります。1980年代に入ると、クラウディア・フォンティンやナオミ・トンプソンと共に「アフロディジアック（Afrodiziak）」を結成し、活動の幅を広げました。この時期から、彼女は著名なアーティストたちのレコーディングにコーラスとして参加するようになります。エルヴィス・コステロ、フィル・コリンズ、アスワド、デヴィッド・ボウイといった、ジャンルを超えた錚々たる顔ぶれの作品で彼女の歌声がフィーチャーされています。

キャリアの大きな転機となったのは、1980年代末にジャジー・B率いる人気グループ、ソウル・II・ソウルに加入したことです。彼らの最初のアルバム『Club Classics Vol. One』は、世界的な大ヒットを記録し、特にキャロンがリードボーカルを務めた楽曲「Keep on Movin'」や「Back to Life」は、グループの成功を決定づけました。このアルバムの成功により、ソウル・II・ソウルはグラミー賞の最優秀R&Bグループ賞をはじめ、数々の賞を獲得しました。しかし、グループの絶頂期とも言えるこの時期に、キャロンはソウル・II・ソウルを離れる決断をします。以降、彼女はグループのライブ活動やスタジオ録音に参加することなく、自身のソロ活動へと移行していきました。

ソロアーティストとしての第一歩は、1990年に発表したファースト・アルバム『UK Blak』です。この作品で彼女はイギリスのR&Bシーンにおける地位を確立します。その後、活動の拠点をアメリカへと移し、1993年にはセカンド・アルバムとなる『Beach of the War Goddess』（邦題：戦いの女神の海辺）をリリースしました。これらのソロ作品では、彼女の持つソウルフルな歌声と、R&B、ソウル、レゲエなどの要素を融合させた独自のサウンドを追求しています。

彼女のディスコグラフィには、ソロアルバムの他にライブ盤やコンピレーション盤も含まれており、そのキャリアの幅広さを示しています。また、日本人アーティストである久保田利伸とのデュエット曲「Just the two of us」など、国境を超えたコラボレーションも行っています。

キャロン・ウィーラーは、ソウル・II・ソウルでの貢献により世界的な認知を得ただけでなく、その後もソロアーティストとして独自の音楽性を追求し続けている、イギリスの音楽シーンにおける重要な女性シンガーの一人と言えるでしょう。

ディスコグラフィ（主要作品）

スタジオ・アルバム
『UK Blak』 (1990年)
『Beach of the War Goddess』 (1993年)
ライブ・アルバム
『Live at Duo Music Exchange』 (2006年)
コンピレーション・アルバム
『Remix Only for Japan』 (1991年)
主なシングル
"Livin' in the Light" (1990年)
"UK Blak" (1990年)
"Blue (Is the Colour of Pain)" (1991年)
"Don't Quit" (1991年)
"I Adore You" (1992年)
"In Our Love" (1993年)
"Soul Street" (1993年)
"Beach of the War Goddess" (1993年)
"Star" (1999年)
"A New Day" (featuring Louie Vega and Jazzie B) (2016年)

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