キャンベラ級強襲揚陸艦

キャンベラ級強襲揚陸艦：オーストラリア海軍の旗艦

オーストラリア海軍のキャンベラ級強襲揚陸艦は、同国海軍における歴史的な転換点となる艦艇です。1982年に退役した航空母艦「メルボルン」を超える同国最大の軍艦であり、スペイン海軍の「フアン・カルロス1世」を準同型艦とする本級は、多用途性を備えた強力な両用戦力として、オーストラリアの防衛戦略に重要な役割を担っています。

黎明期のオーストラリア海軍と両用戦力

オーストラリア海軍は第二次世界大戦中、歩兵揚陸艦を運用し、水陸両用戦力の整備を開始しました。戦後はイギリス海軍よりLST Mk.3型戦車揚陸艦を貸与されましたが、返却後、長らく適切な代替艦がありませんでした。その後、アメリカ海軍の中古艦やバリクパパン級大型揚陸艇などを運用するものの、老朽化が進み、より近代的で大型の両用艦艇の必要性が高まりました。1980年代には「トブルク」を建造、90年代にはアメリカ海軍からニューポート級戦車揚陸艦を取得し、改修の上で運用しました。これらの経験を踏まえ、2000年代に入り、老朽化する両用戦力の更新計画が本格的に動き出しました。

キャンベラ級の誕生：国際競争と建造

更新計画では、「トブルク」とカニンブラ級揚陸輸送艦の後継として2隻の新型揚陸艦の建造が決定されました。フランスのDCNS社とスペインのナバンティア社がそれぞれミストラル級と「フアン・カルロス1世」を基にした提案を行い、最終的にナバンティア社の提案が採用されました。スペインで建造された船体はオーストラリアに回航され、BAEシステムズ・オーストラリア社によって上部構造物や艤装が施されました。この国際的な協力体制は、オーストラリアの防衛力近代化の象徴とも言えます。

設計と能力：多用途性を追求した設計

キャンベラ級の設計は「フアン・カルロス1世」をベースとしながらも、オーストラリア海軍の要求に合わせて様々な改良が加えられています。船体規格にはロイド規格が採用されており、全通飛行甲板、大型ウェルドック、浅い喫水と高い乾舷など、多様な任務遂行に最適化された設計となっています。

艦内には広大な車両甲板、兵員居住区、充実した医療設備などが配置され、兵員輸送能力は1000名を超えます。ウェルドックには上陸用舟艇が搭載され、ヘリコプター運用能力も高く、MRH90やS-70などのヘリコプターに加え、陸軍のCH-47輸送ヘリコプターの運用も可能です。スキージャンプ甲板も備えていますが、STOVL機の運用は現在のところ行われていません。

運用と将来展望

キャンベラ級は、多様な任務に対応可能な汎用性の高さが特徴です。災害派遣、平和維持活動、人道支援活動など、幅広い任務をこなすことが期待されています。F-35Bの搭載も検討されましたが、高額な改修費用を考慮し、見送られました。しかし、将来的な改修によって、その可能性は残されています。

まとめ

キャンベラ級強襲揚陸艦は、オーストラリア海軍の戦力近代化を象徴する艦艇です。その高い多用途性と能力は、オーストラリアの防衛戦略に重要な役割を果たしており、今後もオーストラリア海軍の中核を担う存在であり続けるでしょう。今後の運用状況や、将来的な改修計画にも注目が必要です。

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