キユーピーアメリカンマヨネーズ

キユーピーアメリカンマヨネーズは、かつてキユーピー株式会社によって製造・販売されていたマヨネーズ製品です。1980年に市場に登場し、1999年をもってその製造を終了、2000年に販売が完了しました。

誕生の背景と製品の特徴

この製品が生まれたのは、1980年代初頭の日本の食文化の変化が大きく影響しています。当時、サンドウィッチやハンバーガーといったアメリカ発祥の料理や食品が、一般家庭にも浸透し始めていました。キユーピーアメリカンマヨネーズは、このような新たな食のトレンドに対応するために開発されました。

製品の特徴としては、まずその風味が挙げられます。従来のキユーピーマヨネーズと比較して、より淡白で軽やかな味わいになっていました。これは、アメリカンスタイルの料理との相性を考慮した結果といえます。

また、パッケージデザインも従来品との差別化が図られていました。キユーピーマヨネーズの象徴である赤色のキャップとクロスラインのビニールパッケージに対し、アメリカンマヨネーズでは青色のキャップと同色のクロスラインが採用されました。さらに、アメリカ国旗を想起させる星のマークがあしらわれており、視覚的にも「アメリカン」なイメージを強調していました。

製品の歴史

キユーピーアメリカンマヨネーズは、その前身である「キユーピーマヨネーズ・アメリカン（American）」として、1979年（昭和54年）に東京、大阪、名古屋の3地域で先行して限定発売されました。この地域限定での手応えを経て、翌年の1980年（昭和55年）には満を持して全国での販売が開始されます。

発売から時を経て、1990年代に入ると製品名は「キユーピーアメリカンマヨネーズ」へと変更されました。しかし、この頃にはサンドウィッチやハンバーガーなどのアメリカンスタイルの料理はすでに日本の食卓にすっかり定着しており、特別な「アメリカン」を冠する必要性が薄れていきました。時代の流れとともに、この製品が果たした役割は一段落したと判断され、1999年（平成11年）に生産が終了。在庫がなくなり次第、2000年（平成12年）に販売も終了しました。

印象的な広告展開

キユーピーアメリカンマヨネーズは、その製品の寿命を通じて、印象的な広告・CM展開が行われたことでも知られています。

広告の企画制作は、キユーピーの主要製品の広告を長年手掛けているライトパブリシティが担当しました。特に、コピーライターの秋山晶氏とアートディレクター・デザイナーの細谷巌氏という名コンビがクリエイティブを担当。幼少期からアメリカ文化に親しんでいたという秋山氏にとって、この製品はまさに得意分野であり、アメリカンマヨネーズシリーズの広告は秋山氏の知名度を高める代表作の一つとなりました。

約20年間にわたる販売期間中、広告は大きく3つのシリーズに分けて展開されました。

1. スポーティ・アメリカ編: 発売初期に展開されたシリーズです。
2. アメリカン・ドリーム編: 1981年から1992年まで、比較的長い期間にわたり放送・掲載されました。
3. 大陸横断鉄道シリーズ編: 1992年から生産終了となる1999年まで展開された最後のシリーズです。

これらのシリーズ広告の一部は、1997年（平成9年）にビジネス社から刊行された書籍「アメリカンマヨネーズストーリーズ」にまとめられており、その世界観を垣間見ることができます。

広告媒体としては、女性誌の「JUNON」や「nonno」などに隔月で定期的に掲載されたほか、テレビCMとしても広く展開されました。キユーピーが長年にわたりスポンサーを務める「キユーピー3分クッキング」での放映はもちろんのこと、TBSやフジテレビなどで平日昼の1時台に放送されていた帯ドラマの時間帯などでもCMが流れ、多くの人の目に触れました。

生産終了後の展開

キユーピーアメリカンマヨネーズの生産が終了した後の1999年には、新たなマヨネーズ製品として「キユーピーホイップマヨネーズ」が発売されました。これは空気が含まれてややふっくらとした食感が特徴のマヨネーズでしたが、市場からの支持を得られず、わずか1年足らずで生産終了となりました。興味深いことに、このキユーピーホイップマヨネーズは、アメリカンマヨネーズの後期に用いられていたものとよく似たパッケージデザインで登場していました。

キユーピーアメリカンマヨネーズは、日本の食文化の変化を背景に生まれ、独自のコンセプトと広告展開で一定の存在感を示した製品でした。その役割を終え姿を消しましたが、当時の消費者の記憶に残るマヨネーズの一つとして語り継がれています。

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