キョウソヤドリコバチ

キョウソヤドリコバチ（Nasonia vitripennis）

キョウソヤドリコバチは、寄生蜜蜂の一種で、さまざまなハエの蛹に寄生する性質を持っています。特に、キンバエやニクバエなどの害虫に寄生し、この特性により生物農薬としての利用価値が高まっています。世界中に広く分布しているこの種は、Nasonia属に属し、他にもN. giraulti、N. longicornis、N. oneidaのような近親種が存在します。

形態

この小型のハチは体長約2〜3mm程度で、全体が黒色で光沢を持ちます。触角は黒褐色、そして脚は鮮やかな黄色をしています。特にオスの翅は小さく、体形も特徴的です。

生活史

キョウソヤドリコバチの生殖過程は非常に興味深いです。メスは、寄生先となるハエの囲蛹殻に自らの卵を産み付けます。まず、ハエの囲蛹殻を調べ、細長い産卵管を使って穴をあけ、そこで毒液を注入します。その後、メスは宿主の中に卵を産み付け、通常1つの宿主の膨れた幼虫に20〜50個の卵が生み付けられます。特に、温度が25℃の場合、産卵から36時間後に卵は孵化し、幼虫は約9日後に宿主の中で蛹化します。その後、蛹の成長には約3日かかり、新成虫は囲蛹殻に穴をあけて脱出します。全ての工程が進行するのに、産卵から脱出までの期間は約14日です。

交配も興味深いプロセスで、母体から出てきた直後の新成虫同士が行います。求愛行動は短時間（通常1〜2分）にわたり、特有の交尾行動がみられます。交配後は、メスは別の宿主を探しに移動し、自らの繁殖を続けます。

飼育方法

キョウソヤドリコバチは、その飼育も容易です。プラスチック製やガラスのバイアル、または試験管などで簡単に管理できます。成虫が羽化すると、新たに宿主を用意したバイアルに移し替えます。温度を調整することで生活速度を変化させることができ、例えば低温であれば生活史の進行を遅くし、逆に温度を上昇させることで早めることも可能です（最大28℃）。

また、必要に応じて、冷蔵庫で数週間生活史を停止させることができ、輝く黄色の蛹ステージまたは成虫が特に保存しやすいですが、他のライフステージでも保持可能です。成虫メスには10%のスクロース溶液を与えることで、数週間の生存が可能となり、新しい宿主を提供すれば1か月以上も健康でいることができます。

まとめ

キョウソヤドリコバチはその興味深い生態と実用性から、今後さらなる研究が期待されています。また、ゲノムプロジェクトなどの研究は、彼らの生態的役割や利活用法を明らかにする手助けとなるでしょう。

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