キリン本社ビル

キリン本社ビル：洗練されたデザインと機能性を備えた、かつてのキリンの顔

東京都中央区に位置していたキリン本社ビルは、キリンホールディングスの本社オフィスとして、1995年に竣工しました。建築家の高松伸氏が設計を手掛けたこの建物は、その洗練されたデザインと、機能性を兼ね備えた空間で知られていました。

ガラスカーテンウォールと個性的な内部空間

建物の最大の特徴は、ガラスのカーテンウォールで覆われたファサードです。光を豊富に取り込み、開放的な雰囲気を創出していました。内部には、1階から3階、4階と5階、そして6階から9階にかけて、それぞれ吹き抜けが設けられており、各フロアの空間を繋ぎ、広がりと視覚的な変化を生み出していました。

エントランスホールから会議室、応接室、事務室に至るまで、各スペースは洗練されたデザインで統一されていました。特に、玄関の自動ドアやドアハンドル、水栓といった金具類の多くは、このビルのために特注されたものであり、細部へのこだわりが感じられました。10階には、従業員のための食堂やアスレチックコーナー、屋上庭園が設けられ、快適な職場環境が提供されていました。地下1階と地下2階は駐車場として利用されていました。

数々の賞を受賞した、高いデザイン性

キリン本社ビルは、その優れたデザイン性から、1995年度グッドデザイン賞を受賞しました。また、第3回ニューオフィスマーク認定も受けており、先進的なオフィス空間として高く評価されていました。設計を手掛けた高松伸氏は、以前、キリンプラザ大阪を設計しており、その際に日本建築学会賞作品賞を受賞した実績があり、そのことがキリンビール社長の本山英世氏の目に留まり、キリン本社ビルの設計を依頼されることになったと伝えられています。

解体と跡地利用

2013年、キリンホールディングスは、グループ各社の本社機能を中野セントラルパークサウスに移転・集約することを決定しました。これに伴い、キリン本社ビルは東京建物に土地と建物を売却し、解体されました。多くの思い出と共に姿を消したキリン本社ビルですが、その跡地には新たなタワーマンションが建設され、グッドデザイン賞を受賞するなど、新たな息吹が吹き込まれています。

竣工当時のフロア構成詳細

以下に、キリン本社ビルの竣工当時のフロア構成を詳細に記します。

地下1階・地下2階: 駐車場
1階: エントランスホール、ラウンジ
2階・3階: 会議室、接客スペース
4階: 事務室、応接室、ラウンジ
5階: 事務室、会議室
6階: 事務室、コミュニケーションスペース
7階～9階: 事務室
10階: 食堂、アスレチックコーナー、屋上庭園
* 11階: 機械室、屋上庭園

キリン本社ビルは、単なるオフィスビルとしてだけでなく、時代を反映した建築デザインと、働く人々への配慮が凝縮された空間でした。その存在は、建築史においても重要な位置を占め、多くの関係者にとって忘れられない存在となっているでしょう。

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