ファサード

ファサードの概念と重要性

ファサード（仏: façade）は、建物の正面部分のデザインを指す言葉で、その由来はフランス語にあります。この語は英語の「face」ともつながり、建築物の最も目立つ部分であるため、都市景観における存在感が非常に大きいです。ファサードは、建物の格式や特性を示す役割も果たしており、建築設計の分野では非常に重要視されています。特に歴史的な建築物では、ファサードはその建物の価値を高める大切な要素です。

ファサードには様々なスタイルがあり、例えばゴシック建築の傑作であるランス大聖堂では、内部空間を率直に表現するデザインが特徴的です。一方で、ルネサンス建築のセントアンドレア教会は、内部空間との直接的なつながりを持たず、有機的なデザインがなされています。また、ファサードは建物の側面や背面が装飾的な場合にも用いられることがあります。

ファサード未完成の事例

歴史的な建造物の中には、ファサードが未完成のものも存在します。たとえば、フィレンツェのサン・ロレンツォ聖堂は、ミケランジェロが手掛けたファサード案があるものの、依然として未完成です。さらに、フィレンツェ大聖堂やミラノ大聖堂でも、19世紀までファサードが完成していなかったという事実があります。

ファサード保存の手法

近年では、歴史的建物の保存手法として「ファサード保存」が注目を集めています。この手法は、建物の正面部分またはその一部を残すことによって、都市の再開発と歴史的建物の保存を両立させるものです。通常、正面以外の構造や内部空間は大きく変更され、場合によっては取り壊されることがありますが、街の景観に与える影響は大きく、歴史的価値が重視される場面でこの手法が選ばれることが多いです。

日本では特に土地の高度利用が求められる中で、ファサードの保存と背面に高層建築を導入する手法が増加しています。このような事例としては、以下の建物が挙げられます：

• - 損保ジャパン横浜馬車道ビル - 旧川崎銀行横浜支店のファサードを保存
• - JPタワー - 旧東京中央郵便局のファサードを活用
• - 丸の内パークビル - 旧丸の内八重洲ビルのファサードが残る
• - DNタワー21 - 旧第一生命館のファサードを保存
• - また、大阪松竹座や大阪取引所ビル、中京郵便局、大丸心斎橋店などが異なる事例として存在します。

さらに、歌舞伎座や三菱一号館、中央警察署（北海道）などは、オリジナルのファサードを模した新築のレプリカに仕上げられています。これらの取り組みは、過去の建築文化の尊重と現代の機能性を両立させる試みです。

まとめ

建物のファサードは、ただの外観ではなく、その建物のアイデンティティを形成する重要な要素です。また、その保存や再利用の手法は、都市の歴史と文化を次世代に引き継ぐための大切な施策となっています。

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