キル・チーム

『キル・チーム』（原題：The Kill Team）は、2019年にアメリカ合衆国で公開された、ダン・クラウス監督による戦争ドラマ映画です。主演はナット・ウルフが務めました。

本作は、アフガニスタン紛争中に実際に発生した衝撃的な事件を題材としています。アメリカ陸軍のカルバン・ギブス軍曹が率いる小隊が、複数の非武装民間人を殺害し、その責任を問われた軍曹が終身刑に処されたという実話を下敷きにしています。戦場の極限状態における倫理観の崩壊と、それに抗おうとする兵士の内面的な葛藤を描き出すこの作品は、日本語版公式サイトのキャッチコピーである「ようこそ、戦場へ。」や「これは悪夢のような実話」が示す通り、非常に重いテーマを扱っています。

物語の舞台はアフガニスタン。主人公である新米兵士アンドリュー・ブリグマンは、ディークス軍曹が指揮する小隊に配属されます。しかし、そこで彼が目の当たりにしたのは、敵兵だけでなく、無抵抗の民間人をも躊躇なく手に掛ける小隊の恐るべき実態でした。上官であるディークス軍曹の非道な指示に従わざるを得ない状況に置かれながらも、アンドリューは自身の良心の声に苦しめられます。罪の意識に苛まれ、この非人道的な行為を軍の司令部に報告すべきか否か、激しい内面の葛藤に苛まれます。

アンドリューが告発の決断をためらっている間にも、小隊の暴走は続き、状況はさらに深刻化していきます。そして、アンドリューの様子を不審に思ったディークス軍曹は、彼が自分たちを裏切るのではないかと疑いの目を向け始めます。組織の中での孤立と、命の危険すら感じさせる状況に追い込まれたアンドリューは、自身の道徳的な信念と生き残るための選択の間で、究極の決断を迫られることになります。

本作の製作は、2016年に主要キャストであるナット・ウルフとアレクサンダー・スカルスガルドの出演が決定したことから始まりました。その後、ロブ・モローなどの俳優も加わります。撮影は、カナリア諸島の一つであるフエルテベントゥーラ島で行われ、荒涼とした風景が戦場の雰囲気をリアルに再現するのに寄与しました。音楽はザカリアス・M・デ・ラ・リバが手掛け、物語の緊迫感を高めるスコアを生み出しています。サウンドトラックは2019年10月にリリースされました。

映画の公開プロセスも順調に進みました。2017年11月には最初の劇中写真が公開され、作品への期待感を煽ります。2018年11月には、質の高いインディペンデント映画の配給で定評のあるA24が、本作の全米配給権を獲得したと報じられ、注目度が一層高まりました。そして、2019年4月27日には、ニューヨークで開催されたトライベッカ映画祭でプレミア上映が行われ、観客や批評家に初めてお披露目されました。同年8月13日には、作品の世界観を伝えるオフィシャル・トレイラーが公開され、その衝撃的な内容が大きな反響を呼びました。

本作は公開後、映画批評家から概ね好意的な評価を受けました。主要な批評集積サイトであるRotten Tomatoesでは、以下のような評価を得ています。

レビュー数：23件
批評家支持率：74%
平均点：10点満点中 6.79点

サイトの総評では、「いくつかの欠点はあるものの、人間の根源的な部分に強く働きかける作品」と評され、「才能ある出演者たちの演技によって増幅される凄まじい緊張感の中で、戦場における倫理的な問題を問いかけている」とそのテーマ性と表現力が特に評価されています。また、別の批評集積サイトであるMetacriticでも、13件のレビューに基づく加重平均値が62/100となり、一定以上の評価を得ていることが示されました。

主要なキャストは以下の通りです。

アンドリュー・ブリグマン：ナット・ウルフ（日本語吹替：島﨑信長）
ディークス軍曹：アレクサンダー・スカルスガルド（日本語吹替：近藤隆）
レイバーン：アダム・ロング（日本語吹替：赤坂柾之）
クームズ：ジョナサン・ホワイトセル（日本語吹替：伊藤有希）
ウィリアム・ブリグマン（アンドリューの父）：ロブ・モロー（日本語吹替：露崎亘）
マルケス：ブライアン・マーク
ウェプラー：オシ・イカイル
ローラ・ブリグマン：アンナ・フランコリーニ
キャピー：オリヴァー・リッチー

『キル・チーム』は、単なるアクション映画ではなく、戦争という異常な状況下で人間の道徳観がいかに試されるか、そして組織の圧力の中で個人がいかに抵抗できるかを深く掘り下げた作品です。観る者に重い問いを投げかける、示唆に富むドラマと言えるでしょう。

もう一度検索