キングダムハーツシリーズ

概要

『キングダムハーツシリーズ』（略称: KH）は、スクウェア・エニックス（旧スクウェア）が開発・販売するアクションRPGシリーズです。ウォルト・ディズニー・カンパニーとの協力を得て生まれ、両社のロゴがタイトルに記されています。2002年に第1作が登場して以来、比較的若いシリーズながら、その独特の世界観と魅力的なキャラクターによって世界中で絶大な人気を獲得し、2021年には世界累計出荷本数が3500万本を突破しました。スクウェア・エニックス社内では、『ドラゴンクエスト』『ファイナルファンタジー』と並ぶ「三本の柱」の一つとして位置づけられています。

シリーズのディレクターは、主にキャラクターデザインを手掛けてきた野村哲也氏が担当しています。本作は彼にとって初のディレクション作品であり、企画立案、シナリオ原案、コンセプトデザイン、キャラクターデザインなど、多岐にわたる役割を担っています。

開発の経緯

シリーズ誕生のきっかけは、『ファイナルファンタジーVIII』開発中の偶然の出来事に遡ります。当時、スクウェアとウォルト・ディズニー・ジャパンは同じビルに入居しており、エレベーターでの立ち話からゲームの共同制作のアイデアが持ち上がりました。これを受けたプロデューサーの橋本真司氏らが話し合う場に居合わせた野村哲也氏が、デフォルメキャラクターによるアクションゲームという自身の構想と、ゲーム分野での開拓が進んでいなかったディズニーキャラクターを結びつけることで、新たな作品を生み出せると考え、自らプロジェクトを推進することを申し出ました。当初はオリジナルキャラクターを主人公に据えるなど、ディズニー側からの提案とは異なる企画でしたが、野村氏の熱意によって実現に至りました。タイトル名は「キングダム」に「心」（ハーツ）を加えて『キングダムハーツ』に決定。既に商標登録されていた「キングダム」を補い、また語呂の良さを優先して「オブ」を省いた経緯があります。

本作の著作権は、スクウェア・エニックスとディズニー双方が有していますが、ディズニー側の割合が高くなっています。

シリーズの構成と物語

本シリーズは多数の作品が発表されていますが、全てが同一の世界観で展開され、一本の壮大な物語として繋がっています。ディレクターの野村氏は常に数作品先までを見据えて構想を練っており、全体像を把握しながらストーリーが構築されています。物語は、キーブレードという鍵状の剣を手にした少年ソラが、離ればなれになった友人たちを探し、ドナルドやグーフィーといったディズニーキャラクターと共に闇の勢力と戦い、世界を救う冒険を描くことを主軸としています。

シリーズの物語は大きく二つの章に分けられています。第1作から『キングダムハーツIII』までで完結した、マスター・ゼアノートを巡る戦いを描いた「ダークシーカー編」。そして、『キングダムハーツIII』の後に始まる新たな物語「ロストマスター編」です。過去の時代を描く作品なども含め、それぞれが本編の理解を深める上で重要な役割を果たしています。作品は、ナンバリングタイトルのほか、携帯ゲーム機やモバイル向けの外伝、既存作品をまとめたHDリマスター版などが展開されています。一部の作品には、新要素を追加した「ファイナルミックス」版や、リメイク版である「Re:」が付いたタイトルも存在します。

ゲームシステムと特徴

ジャンルは公式にはRPGとされていますが、キャラクターを直接操作して戦うアクション要素が強く、実際にはアクションRPGに近いゲーム性を持っています。プレイヤーは3D空間（一部作品は2D）を自由に移動し、敵とエンカウントして戦闘を行います。操作は比較的シンプルですが、高難易度モードや隠しボス、やり込み要素も用意されており、初心者から上級者まで楽しめる設計となっています。国内外を問わず人気が高いシリーズですが、特に海外市場を意識したゲーム内容の調整は行われず、「面白いものなら受け入れられる」という方針で制作されています。

物語の進行は、主人公が様々な「ワールド」を訪れ、その世界で起こる事件を解決することで進みます。これらのワールドは、『塔の上のラプンツェル』や『パイレーツ・オブ・カリビアン』といった歴代のディズニー作品をモチーフにしており、その世界観やキャラクターが登場人物たちとクロスオーバーします。ただし、他のクロスオーバー作品とは異なり、基本的に異なるワールドの住人が一堂に会することはありません（これはディズニー側からの要望に沿ったものです）。ディズニーワールドでは原作に沿った物語が展開される一方、シリーズオリジナルのストーリーはよりシリアスかつ複雑な構成で描かれています。

バトルシステムは、簡単な操作で派手なアクションを繰り出せるのが特徴です。マップ上で敵パーティと遭遇するエンカウント形式を採用しており、移動と戦闘の画面切り替えはありません。画面左下に表示されるコマンドを選択して、「たたかう」や「まほう」などの行動を行います。作品によってシステムに差異はありますが、この基本構造は共通しています。

パーティーは、プレイヤーキャラクターに加え、NPCキャラクターと共に編成します。ナンバリング作品ではソラを中心にドナルドとグーフィーが固定メンバーとなり、さらに訪れたワールドによってはその世界のキャラクター（アラジン、ビーストなど）がゲストとして加わり、最大3人（『KHIII』では最大5人）で行動します。NPCの行動パターンはある程度カスタマイズ可能です。一部作品では、召喚によって一時的にパーティーに加わるキャラクターや、特殊なシステムによる仲間（COMのフレンドカード、3Dのドリームイーター、DRの修行仲間など）が存在します。

物語をより深く理解するための要素として、「レポート」や特定の条件を満たすと視聴できる「シークレットムービー」があります。レポートは物語の背景や登場人物の心情などが記されており、シークレットムービーは次作への伏線や謎が含まれています。特に「ファイナルミックス」版では、より踏み込んだ内容のムービーや強力な隠しボスが追加され、閲覧条件も一層厳しくなる傾向があります。

世界設定と物語の核心

シリーズの世界は「星の大海」と呼ばれる広大な空間に点在する無数の「ワールド」で構成されています。これらのワールドは、それぞれの心を「扉」と「鍵穴」によって守られ、通常は見えない殻で隔てられています。外界からの干渉は「世界の混乱を招く」とされ、基本的に制限されています。キーブレード使いなど一部の存在のみが「グミシップ」や「闇の回廊」「異空の回廊」といった手段を用いてワールド間を移動できます。

世界は大きく「光の世界」「闇の世界」「狭間の世界」に区分されます。ソラたちが主に冒険するのは「光の世界」に点在するワールドです。「闇の世界」は光の世界の裏側にある閉ざされた空間で、強力な闇の存在が生息しています。「狭間の世界」は光と闇の中間に位置し、行き場を失った者が流れ着く不安定な場所です。

物語の中心となる概念の一つに「キングダムハーツ」があります。「大いなる心」「王国の心」とも呼ばれる心の集合体であり、敵対する存在がその完成を目論みます。キングダムハーツにはいくつかの種類があり、ハートレスが奪った世界の心で構成されたもの、XIII機関が人の心を集めて作ったものなどがありますが、最終的にマスター・ゼアノートが求めたのは「全ての世界の心が集約された真のキングダムハーツ」でした。これを呼び出すには、「χ（キー）ブレード」というキングダムハーツと対を成す唯一の鍵が必要です。χブレードは、純粋な光と闇の力が衝突することで完成するとされ、かつてこれが原因で「キーブレード戦争」という大戦が起こり、世界は闇に覆われ分断されたと伝えられています。

世界を脅かす存在として、「ハートレス」（心を失った存在）、「ノーバディ」（強い心の抜け殻）、「アンヴァース」（負の感情から生まれる魔物）、「ドリームイーター」（眠りに閉ざされた世界の闇）などが登場します。また、物語に深く関わる組織や人物として、セブンプリンセス（純粋な光の心の持ち主）、ヴィランズ（ディズニーの悪役たちの集まり）、XIII機関（特別なノーバディの組織）、キーブレードマスター（世界の秩序を守護し、後継を育てる者）、そしてキーブレード戦争の再来を目論む「13の闇の探求者」とそれに立ち向かう「7人の光の守護者」などがいます。

今後の展望

『キングダムハーツIII』で長年の物語「ダークシーカー編」は一旦の区切りを迎えましたが、シリーズ自体はそこで終了ではなく、これは大きな物語の「第一部」であるとディレクターの野村氏は語っています。今後は「ロストマスター編」として新たな章が始まり、ソラたちの新たな冒険や、過去の時代に遡る物語などが展開されていくことが示唆されています。

シリーズは時に複雑な設定や入り組んだ時系列を持つため、多くの謎を残していますが、それもまたプレイヤーを引きつける魅力の一つとなっています。壮大なスケールで描かれる光と闇の戦い、個性豊かなオリジナルキャラクターと親しみ深いディズニーキャラクターたちの共演は、今後も多くのファンを魅了し続けるでしょう。

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