キング・ケリー

キング・ケリー：球史を彩った革新者

マイケル・ジョセフ・"キング"・ケリー（1857年12月31日 - 1894年11月8日）は、19世紀に活躍したアメリカのプロ野球選手です。外野手、捕手として、その名を馳せました。彼は、その革新的なプレースタイルと、魅力的なキャラクターで、野球界に大きな足跡を残しました。

革新的な戦術家

ケリーは、ただの優れた選手ではありませんでした。彼は、常に新しい戦術や技術を開発し、チームを勝利に導きました。例えば、「ヒットエンドラン」や「フックスライド」といった走塁技術、内野ゴロの際の捕手による一塁カバー、投手と捕手間のサインなど、現代野球にも通じる戦術を考案しました。当時の監督キャップ・アンソンも、ケリーの頭脳を高く評価していました。

ホワイトストッキングス時代には、チームはリーグを5度制覇。ケリーが出塁と盗塁で相手をかき回し、アンソンが走者を還すという、勝利の方程式を作り上げました。しかし、ケリーの革新性は、ルールに縛られない抜け目なさにもありました。審判の目を盗んで走塁をショートカットしたり、相手走者のベルトを掴んで妨害したりすることもあったそうです。

観客を魅了したスター

ケリーは、ファンサービスにも熱心でした。サインを書くことを広めたのは彼だと言われています。社交的で、スター性にあふれていたケリーは、1887年に当時としては破格の1万ドルでボストン・ビーンイーターズに移籍。その人気ぶりを示すエピソードとして、当時のボストンでは、ほとんどのアイリッシュ・サロンに、スライディングするケリーの絵が飾られていたそうです。

普段から派手な服装を好み、ペットの猿を肩に乗せ、日本人のお供を連れていたという逸話も残っています。また、大の酒好きとしても知られ、「試合中に酒を飲むのか?」と聞かれた際には、「それは試合の長さによる」と答えたそうです。ある試合では、ボックス席のファンと一緒に酒を飲み始め、試合開始が遅れたこともありました。

監督としての挑戦と早すぎる死

1890年には、プレイヤーズ・リーグで監督兼任となり、リーグ優勝を果たします。しかし、プレイヤーズ・リーグは短命に終わり、彼は最初で最後の優勝監督となりました。その後、アメリカン・アソシエーションで監督を務めますが、チームを途中で解雇されてしまいます。1893年に選手を引退し、翌年、肺炎のため36歳という若さでこの世を去りました。病院へ運ばれる際、担架から落ちてしまった際に「これが人生最後のスライディングだな」と言ったという逸話は、彼の人生を象徴しているかのようです。

殿堂入りと語り継がれる功績

1945年、ケリーはベテランズ委員会によりアメリカ野球殿堂入りを果たしました。彼の功績は、現在でも多くの人々に語り継がれています。

"Slide Kelly, Slide!"（スライド、ケリー、スライド!）という応援歌は、彼の人気を物語るエピソードの一つです。このフレーズは、ケリーの走塁をファンが楽しむ際の掛け声が元となり、後に曲として発表され、大ヒットしました。

キング・ケリーは、野球の戦術を進化させ、ファンを熱狂させた、まさに伝説的な選手でした。彼の革新的な精神とエンターテイナーとしての才能は、これからも野球史の中で輝き続けるでしょう。

もう一度検索