キング・チャールズ・スパニエル

キング・チャールズ・スパニエル

キング・チャールズ・スパニエルは、イギリスのイングランドを原産とする愛玩犬種です。「国王チャールズのスパニエル犬」という意味の名前が示す通り、歴史的に王室との深いつながりを持っています。別名としてイングリッシュ・トイ・スパニエルとも呼ばれます。

歴史

キング・チャールズ・スパニエルの起源には諸説ありますが、小型のスパニエル自体は古くからイギリスに存在していました。特に、チャールズ2世がブラック・アンド・タンの毛色をした小型のスパニエルを愛育し、その犬種への評価を高めたことが知られています。王は熱心なブリーダーであり、ハンプトン・コート宮殿ではキング・チャールズ・スパニエルが自由に走り回っていたと伝えられています。サミュエル・ペピスの日記には、王が公務にもスパニエルを同伴させていた様子が記録されており、その溺愛ぶりは側近から政務を怠けていると嘆かれるほどでした。

チャールズ2世に愛されたことがきっかけで、同じタイプの犬はキング・チャールズ・スパニエルと呼ばれるようになり、次第に一般にも広まっていきました。しかし、ヴィクトリア朝時代に入ると、流行や好みの変化により、犬種は小型化され、顔が平坦になる傾向が見られました。この傾向は1920年代まで続きましたが、行き過ぎた改良は犬の健康を害するようになり、またブームが去ったことなどから、愛好家の間ではマズルが長く、より健康的な姿への回帰が望まれるようになりました。

その結果、ピーラムの姿を忠実に復元したキャバリア・キング・チャールズ・スパニエルが誕生し、現在では広く知られる人気犬種となっています。一方で、平坦な顔を持つキング・チャールズ・スパニエルの人気も根強く、両方の犬種がザ・ケネルクラブに公認されています。

特徴

キング・チャールズ・スパニエルの特徴として、つぶれたマズル、小さく離れた目、大きめの頭部、ややずんぐりとした体型、細い脚などが挙げられます。その顔つきは「東洋人の顔つき」と表現されることもあります。耳と尾は垂れ下がっており、飾り毛があります。被毛はウェーブがかったロングコートで、毛色はブラック・アンド・タン、ブレンハイム、トライカラー、ルビーなど、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルと同じです。

体高は26〜31cm、体重は3.6〜6.3kgの小型犬で、性格は飼い主家族によく甘え、陽気ですが、見知らぬ人には無愛想な一面もあります。子供には寛容で、しつけの飲み込みも良いとされています。運動量は少なめなので、散歩の時間は短くて済み、高齢者でも安心して飼育できます。ただし、長毛種であるため、寒さには弱いので、冬季の健康管理には注意が必要です。

かかりやすい病気としては、熱中症、軟口蓋過長症、口蓋裂、心臓病、水頭症、気管虚脱などが挙げられます。また、いびきが大きい場合があるため、飼育前に家族の理解を得ておくことが大切です。

キング・チャールズ・スパニエルは、個体によってマズルの長さに大きな差が見られます。パグのように完全につぶれているものから、チワワのように短いもの、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルとほとんど同じ長さのものまで存在します。そのため、マズルの長い個体がキャバリアとして誤って流通し、繁殖に使われてしまう事故も過去にはありました。現在ではそのようなケースはほとんどありませんが、稀にマズルが標準よりも短いキャバリアが生まれることもあります。

飼育状況

イギリスではかつて人気犬種でしたが、近年は登録数が減少し、絶滅も危惧される状況となっています。しかし、熱心な愛好家によるブリーディングは続けられており、短吻種を好む愛犬家に親しまれています。日本でも、好き嫌いが分かれる犬種であるため、あまり一般的ではありませんが、国内登録も行われており、ブリーダーからの入手が可能です。

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