キンケラ・マルティン

キンケラ・マルティン：ボカの色彩を永遠に描いた画家

キンケラ・マルティン（1890年3月1日 - 1977年1月28日）は、アルゼンチンを代表する画家の一人です。ブエノスアイレスの貧しい地区、ボカで捨て子として生まれた彼は、養父母に育てられながら、14歳から美術学校に通い始めました。

彼の芸術家としてのキャリアは1910年から本格的にスタートします。初期の頃から、ボカ地区独特の色彩豊かな家並み、活気あふれる港の風景を主題とした作品を数多く発表し、独自の画風を確立しました。1920年には、アルゼンチンの国立サロンで2位に入賞、才能を高く評価されました。

才能はアルゼンチン大統領の目に留まり、マルセーロ・アルベアール大統領からの厚い信頼を得たキンケラ・マルティンは、1922年にはスペインのマドリッドにあるアルゼンチン領事館の書記官に任命されるという異例のキャリアを歩みます。しかし、彼の情熱は常に絵画にありました。マドリッド、パリ、ニューヨーク、ローマ、ロンドンと、世界各地を巡りながら精力的に作品を発表し続け、1930年代にはアルゼンチンに戻り、画家としての活動に専念します。

キンケラ・マルティンは、画家としての成功にとどまらず、社会貢献にも積極的に関わりました。彼は篤志家として知られ、学校や病院建設に多額の寄付を行いました。1938年には、自らのアトリエを改築し、1階を幼稚園として開放しました。このアトリエは、現在ではキンケラ・マルティン・ボカ美術館として、彼の作品を展示する場となっています。

キンケラ・マルティンは、ボカ地区の街並みの美化にも尽力しました。彼の色彩感覚豊かな絵画は、ボカ地区の住民たちに大きな影響を与え、独特の色彩美を誇る街並みの形成に貢献しました。

彼の作品は、ボカの港の活気、鮮やかな色彩、そして人々の温かさといった、地域特有の雰囲気を見事に捉えています。力強い筆致と、暖色系の鮮やかな色彩が特徴で、見る者の心を明るくします。代表作には『港風景（1）』(兵庫県公館所蔵)などがあり、アルゼンチン国民の誇りとなっています。

キンケラ・マルティンは1977年、87歳で生涯を閉じました。彼の作品は、現在も世界中で愛され、アルゼンチンのみならず、国際的な評価も確立しています。

キンケラ・マルティン・ボカ美術館

キンケラ・マルティンが設立に貢献したキンケラ・マルティン・ボカ美術館は、アルゼンチン、ブエノスアイレスのボカ地区に位置し、彼の作品を数多く展示しています。正式名称は「Museo de Bellas Artes de La Boca de Artistas Argentinos “Benito Quinquela Martín”」です。美術館を訪れることで、彼の生涯と作品世界をより深く理解することができます。

住所: Av. Don Pedro de Mendoza 1835

彼の作品は、ボカ地区の風景、労働者の姿、そして港の情景など、多岐に渡り、アルゼンチンの文化と歴史を反映しています。彼の功績は、画家としての卓越した才能のみならず、地域社会への貢献にも及び、アルゼンチン文化に大きな足跡を残しました。彼の作品を通して、ボカ地区の独特の雰囲気と、キンケラ・マルティンの人生観に触れることができます。

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