キンラン属

キンラン属（学名：Cephalanthera）は、ラン科に属する地生の多年草です。日本においては、その美しい姿から「金蘭」の名で親しまれています。

特徴

キンラン属の植物は、地下に短い根茎を持ち、そこから伸びる長い根で生育します。茎は直立し、互生する葉は披針形または長楕円形をしており、葉脈が顕著であることが特徴です。花は穂状花序をなし、やや直立して咲きます。花の大きさは中型からやや小型で、黄色または白色をしています。苞は小さいながらも、下方のものは時に葉状に長くなり、花よりも目立つことがあります。萼片は離生しており、円形をしていて、完全に開かず半開きの状態を保ちます。側花弁は比較的小型で、種類によっては幅広くなることもあります。唇弁は先端が3つに裂けており、中裂片と2つの側裂片に分かれます。側裂片は蕊柱を抱くように配置されています。

分布

キンラン属は、東アジアからヨーロッパ、北アフリカ、そして北アメリカ西海岸にかけて広く分布しており、およそ15種が確認されています。日本国内には、そのうち5種が自生しています。

日本に分布する主な種

以下に、日本に分布するキンラン属の代表的な種を挙げます。

ギンラン (Cephalanthera erecta):
北海道から九州にかけて分布し、明るい林床に生育します。花は白色で、茎の高さは10-30cm程度です。
キンラン (Cephalanthera falcata):
本州、四国、九州に分布し、ギンランと同様に明るい林床で見られます。花は濃い黄色をしており、茎の高さは30-70cmに達します。環境省により絶滅危惧II類(VU)に指定されています。
ササバギンラン (Cephalanthera longibracteata):
本州、四国、九州に分布し、山地のやや暗い林床を好みます。花は白色で、唇弁には黄褐色の突起があります。茎の高さは30-50cm程度です。
クゲヌマラン (Cephalanthera longifolia):
北海道、本州中部・北部、四国、九州に分布し、まばらなクロマツ林などの林床に生育します。こちらも環境省により絶滅危惧II類(VU)に指定されています。
* ユウシュンラン (Cephalanthera subaphylla):
北海道から九州にかけて分布しますが、比較的稀です。山野の暗い林床に生育し、花は白色で唇弁の先端が黄褐色になります。葉は退化して鱗片状になり、あっても1-2cm程度の長さです。茎の高さは10-15cm程度で、環境省により絶滅危惧II類(VU)に指定されています。

キンラン属の植物は、その生育環境の変化に敏感であり、森林伐採や環境汚染などにより、その生息数を減らしています。自然保護の観点からも、これらの植物の生育環境を守ることが重要です。

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