キーウの聖ソフィア大聖堂と関連する修道院群及びキーウ・ペチェールシク大修道院

キーウの聖ソフィア大聖堂と関連する修道院群、キーウ・ペチェールシク大修道院

キーウの中心に位置する聖ソフィア大聖堂と、周辺の修道院群は、ウクライナの文化と歴史の象徴的存在であり、世界遺産にも登録されています。これらの遺産は、ウクライナのキリスト教の普及において重要な役割を果たし、キエフ・ルーシの繁栄を物語る貴重な文化財です。1990年、これらの遺産はウクライナ初の世界遺産として登録され、現在もその価値が認められています。

構成資産の概要

この世界遺産は、以下の3つの構成資産から成り立っています。

聖ソフィア大聖堂

聖ソフィア大聖堂は、9世紀の終わり頃に建立され、ウクライナにおける最古の聖堂として知られています。大聖堂の名称は、コンスタンティノープルのハギア・ソフィアから取られています。建立当初はギリシャ十字式のデザインを持ち、当時の様式も見ることができますが、1685年から1707年の間に行われた大改築により、ウクライナ・バロック様式の特徴も見られます。大聖堂の周辺には、神学校や信者の家、府主教の邸宅などが存在し、宗教的かつ政治的な中心地としても重要な役割を果たしてきました。特にモンゴルの侵攻の際にも残された「不滅の壁のマリア」のモザイク画は、当時の技術の高さを物語っています。

キーウ・ペチェールシク大修道院

キーウ・ペーチェルシク大修道院は、11世紀半ばに設立され、ドニエプル川沿いに広がる一大宗教施設です。この大修道院は、キリスト教の普及や文化の発展に寄与した重要な場であり、特に年代記や聖書の翻訳が行われた場所としても知られています。大修道院は、主要な宗教建築物やさまざまな博物館が集まる「上の修道院」と、地下墓地を擁する「下の修道院」に分かれており、精神的な場であると同時に、文化の中心でもありました。

ベレストヴォの救世主聖堂

この聖堂は、キーウのペチェールシク地区にあり、世界遺産の一部として位置づけられています。保全活動も行われており、特に2000年には207,970 USDの資金がつぎ込まれるなど、重要な文化財としての保護が進められています。

登録経緯と登録基準

ウクライナは1988年に世界遺産条約を批准し、その翌年に聖ソフィア大聖堂とペチェールシク大修道院を世界遺産に推薦しましたが、当初は個別の物件としての推薦でした。しかし、ICOMOSの勧告により両者はまとめて推薦されることとなります。正式に登録されたのは1990年であり、その後も地域の文化や歴史の重要な証拠とされています。登録基準としては、人類の創造的才能を示し、文化的伝統の貴重な証拠であることが挙げられています。

危機遺産指定とその影響

最近の政治的な状況によって、2022年のロシアのウクライナ侵攻を受け、これらの遺産が危機にさらされています。2023年には、国際的に危機遺産としてリストに登録されることとなり、今後の保存と保護が求められています。

これらの文化遺産は、キエフ・ルーシの歴史における中心的な役割を果たし、ウクライナのアイデンティティの一部とされています。修復や保護の努力が続く中、聖ソフィア大聖堂とペチェールシク大修道院群は、これからも観光地として重要な位置を維持し続けるでしょう。

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