年代記

年代記と編年史

年代記（ねんだいき）や編年史（へんねんし）は、歴史上の出来事を時系列に記載した文書です。これらの書物は、事実を年ごとに整理して記録するという重要な役割を果たしており、特に古代から中世にかけて幅広く使用されました。

ヨーロッパにおいては、年代記は一般的に二つの形式に分けられます。一つは重要な出来事を詳細に記録する形式の「クロニクル」で、もう一つは年表に近い簡略な形式の「アナリス」です。また、ロシア語などでは、ルーシの年代記を示す際に「レートピシ」という名称が使われ、これもクロニクルやアナリスと区別されています。

これらの書物は、天地創造の起源から始まった人類の歴史を年次に沿って綴り、12世紀には特に「世界年代記」（オットーの『二国年代記』など）が著名でした。13世紀頃からは、多くの宗教者や一般人が同時代の具体的な出来事を記録し始め、年代記の数が増えていきました。イングランドでは修道院で続けられた『大年代記』やフロワサールの年代記などがその代表的な例です。

日本においても、同様の年代記が作成されましたが、独自のスタイルがあり、歴代の天皇名を見出しとして、その下に出来事を簡素に記述する方法が採られました。日本現存最古の年代記は11世紀にさかのぼるもので、春日若宮社社家千鳥家が所蔵する『皇代記』がその一例です。さらに、『続日本紀』には、8世紀には既に年代記が存在していたことが示唆されています。983年には、東大寺の奝然が「王年代紀」という年代記を宋に献上したという記録もあります。

おもな年代記

世界の年代記

• - 『年代記』（タキトゥス）

ローマ帝国の初代皇帝アウグストゥスの死からネロの死までを描いています。

• - 『春秋』

春秋時代の魯の歴史を年順にまとめ、孔子が作者とされています。

• - 『ニキウのヨハネス年代記』（7世紀）

エジプトの僧侶によって書かれ、天地創造から7世紀までを対象にしています。

• - 『アングロサクソン年代記』（9世紀）

アルフレッド大王が編纂させたもので、イギリスの歴史を記録しています。

• - 『テオファネス年代記』（9世紀）

東ローマの修道士によるもので、古代から中世にかけてのローマ帝国の記録です。

• - 『続テオファネス年代記』（10世紀）

813年から963年までを扱う東ローマの年代記です。

• - 『完史』（13世紀、シリア）

イスラム世界史を天地創造から1231年まで記載した重要な歴史書です。

日本の年代記

• - 『鎌倉年代記』（14世紀）

鎌倉幕府の1183年から1331年までの歴史を記録しています。

• - 『皇代暦』（14-15世紀）

神代から1477年までの歴史をまとめた書物で、公家の洞院公賢の作品です。

• - 『武家年代記』（14-15世紀）

鎌倉時代から戦国時代にかけての武家政権の在任表を含む年代記です。

年代記や編年史は、単なる歴史書ではなく、それぞれの時代の価値観や社会背景を反映した重要な文化遺産です。これらの資料を通じて、我々は過去の出来事をよりよく理解することができます。

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