キーウィ (人)

キーウィ：ニュージーランドの象徴と国民の愛称

ニュージーランドの国鳥であるキーウィは、同国の人々を表す愛称としても広く知られています。単なるニックネームではなく、ニュージーランド人のアイデンティティや誇りを象徴する、重要な文化的シンボルとして定着しています。しかし、この愛称が現在のような地位を築くまでには、興味深い歴史があります。

キーウィ：国を象徴する鳥

マオリ族にとって、キーウィの羽根は特別な意味を持ち、族長への献上品とされていました。ヨーロッパ人による発見は1811年。当初はペンギンの一種と誤解されたキーウィでしたが、その希少性から注目を集め始めます。1835年には宣教師ウィリアム・イェイツがキーウィを「ニュージーランドで最も珍しく注目すべき鳥」と評した記録が残っています。

20世紀初頭には、漫画などでニュージーランドの象徴としてキーウィが描かれるようになり、その認知度を高めました。例えば、1904年の『ニュージーランド・フリーランス』には、ラグビーで勝利したキーウィがモアに成長した姿が描かれています。また、1905年の『ウェストミンスター・ガゼット』には、ニュージーランドとオーストラリアを象徴するキーウィとカンガルーが風刺画として描かれていました。

第一次世界大戦までは、キーウィは主に国そのものの象徴として使用されていました。しかし、その状況は第一次世界大戦によって変化します。

キーウィ：兵士たちから国民へ

第一次世界大戦以前、ニュージーランド兵士は「エンゼダーズ」や「マオリランダーズ」などと呼ばれていましたが、1917年頃からは「キーウィーズ」と呼ばれるようになりました。この変化には、いくつかの要因が考えられます。

まず、1886年からキーウィの絵は軍の記章として使用されており、ニュージーランド軍との関連性が強まりました。第二次世界大戦を通してこの傾向は続き、戦場では「キーウィーズ」が一般的な呼び名となりました。また、イギリス帝国軍の間で広く知られていた「キーウィ」という名の靴磨きクリームも、この愛称の普及に貢献したと考えられています。

第一次世界大戦後、ヨーロッパに駐留していたニュージーランド兵士たちが、キーウィの絵を刻んだという逸話も残っています。これらの出来事が、「キーウィーズ」という呼び名をヨーロッパに広めることに繋がりました。

第二次世界大戦後、「キーウィ」は徐々にニュージーランド人の全体を表す言葉として定着し、現在では世界中で、そしてニュージーランド人自身もこの愛称を積極的に使用しています。

現代における「キーウィ」

「キーウィ」は、通常、人名として使う場合は大文字で始まり、複数形は「Kiwis」となります。一方で、鳥の名前としては小文字のkから始まり、「kiwi」と複数形でも表記されることが多いです。この微妙な違いは、例えばニュージーランド銀行の「Kiwis for kiwi」というスローガンによく表れています。これは、「ニュージーランド人がキーウィ（鳥）を支援する」という意味です。

重要なのは、「キーウィ」はほとんどの場合、侮辱的な意味合いを持たないということです。むしろ、自国への誇りと愛着を示す肯定的な表現として用いられることが一般的です。政府系サービスや国営企業の名前にも「キーウィ」が使われていることは、その証拠と言えます。

このように、キーウィは単なる鳥の名前ではなく、ニュージーランドの文化、歴史、そして国民性を象徴する重要な存在となっています。その愛称の定着には、歴史的な出来事や社会的な変化が複雑に絡み合っています。

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