マオリ

マオリの概要

マオリは、ニュージーランドに先住する民族で、主にポリネシア人のグループに属しています。マオリ自身が使用する言語であるマオリ語では、「普通」という意味を持つ「マオリ」という言葉が使われ、彼らは自らを「Tangata Maori」と称し、西洋人と区別する意識が根付いています。しかし、英語では発音が難しいことから、「マオリ」という呼称が広まりました。

歴史的背景

神話の物語

マオリの神話によれば、伝説の航海者クペが「ハワイキ」という地から来航し、アオテアロア（ニュージーランド）の存在を人々に伝えたとされています。その後、7艘の航海カヌーから成る「大艦隊」がアオテアロアの地に到達しました。これらのカヌーには独特の名前が付けられており、「アオテア」や「アラワ」などが含まれています。1987年には、航海者たちが伝説を実証するべく試みを行い、一部成功に至るというエピソードがあります。

考古学の視点から

考古学上は、マオリの人々はおそらくクック諸島またはタヒチから移住してきたとされています。彼らは9世紀から10世紀にかけてアオテアロアに定住し、狩猟採集生活を送りました。しかし、気候が異なるため、農業も併せて行うようになり、彼らの住居も独自の形状を持ち始めました。コミュニティは「イウィ」と呼ばれる部族を形成し、それぞれに防衛手段として要塞のような「パ」を構築しました。このことは、彼らの社会がどのように変化し、発展していったかを示しています。

1840年、ワイタンギ条約が締結され、マオリはイギリスに主権を譲渡しましたが、文言の解釈の違いから対立が生じ、最終的には1860年代にマオリ戦争へと発展しました。

文化的側面

マオリの文化は、独特の身体装飾や挨拶の方法を持っています。刺青は社会的地位を示す重要な要素であり、彼らの間で広く行われています。また、鼻をくっつけ合う挨拶は、親密な関係を示す独自の表現法です。さらに、ハカと呼ばれる伝統舞踊は、戦士たちが戦いへ向かう前や重要な挨拶の場面で行われています。この舞踊は、ニュージーランドのラグビーチーム「オールブラックス」にも受け継がれています。

伝統芸能のひとつであるポイは、スイングジャグリングのような形で世界中で実施されています。マオリの人々は自らの先祖をさかのぼり、「大艦隊」のどのカヌーに乗っていたのかを重視し、社会的なアイデンティティの一部としています。

近年、マオリの中から選ばれる「王」が存在し、現在の王はナ・ワイ氏です。彼は法的権限を持たないものの、マオリ社会内では高い権威を得ています。歴代の王たちは、特に重要な国際的な行事に参加することもあり、2024年には東京での博物館のイベントにも絡む活動が行われました。

現代における課題

マオリの生活は依然として多くの課題に直面しています。国連の調査によると、彼らの平均寿命は他の先住民族に比べて短く、また経済的・社会的権利についてもまだ制約があります。自殺率の高さや暴力的な遺伝子に関する議論も続いており、これらのトピックへの理解促進が求められています。

マオリを題材にした作品

マオリをテーマにした映画や作品も多く存在します。『River Queen』や『クジラの島の少女』など、彼らの歴史や文化を描いた物語が数多くあります。また、ニュージーランドの国籍教育にもマオリの歴史が反映されています。

マオリは独自の文化と歴史を持つ民族であり、彼らの足跡は今もなおアオテアロアの地に息づいています。

もう一度検索