キ105 (航空機)

キ105 (鳳)

キ105は、第二次世界大戦中に大日本帝国陸軍によって開発された試作輸送機であり、その開発には日本国際航空工業が関与していました。この機体の呼称としてよく知られる「鳳（おおとり）」は、実際には社内での名称であり、文献によって異なる表記が見られます。また、アメリカ軍ではこの機体に「Buzzard（バザード）」というコードネームが付けられ、「ハゲタカ」という意味を持ちます。

開発の経緯

1943年に遡りますが、その年から日本国際航空工業は大型輸送用グライダーの開発に着手していました。1944年8月には、軍用グライダーク7-IIが完成し、帝国陸軍はこの機体をエンジン付きの輸送機として改造するよう指示を出しました。アメリカ軍の通商破壊作戦が進行するなか、帝国陸軍は南方における燃料輸送を行うために、ク7-IIを基にした輸送機を数百機製造する計画を立てました。

その際求められた条件には、4トンの積載能力または40名の兵員輸送ができること、航続距離は1,500キロメートル以上、大量生産が可能であることが含まれていました。試作機であるキ105は、ク7-IIの試作第2号機を改造し、1944年11月に完成しました。機体構造は双胴式で、中央胴体には双側胴と高翼式の主翼が組み合わされており、積載物の積み下ろしが容易な設計となっています。エンジンは当初ハ13型が搭載されましたが、その後出力不足からハ26-IIまたはハ102に換装されました。

運用と量産

開発が進む中、陸軍からは300機の量産が指示され、国際航空工業は京都周辺の木工家具工場を動員して量産体制を整えました。この生産過程では、小学校の講堂なども組み立て場所として活用されたと言われています。しかし、空襲や物資不足、働き手の徴兵や学徒動員による影響から、生産は順調には進みませんでした。最終的には、9機しか完成しないまま終戦を迎えたのです。

完成した機体は滋賀県にある八日市飛行場へ移され、訓練に利用されましたが、空襲によって破壊され、その結果、残存機も終戦時に焼却されました。また、通常の輸送機型であるキ105甲に加え、燃料輸送型（キ105乙）も計画されていましたが、こちらも完成を見ることはありませんでした。

評価と課題

この機体は、もし開発が早期になされ、戦略兵器として効果的に利用されていれば、戦局に大きな影響を及ぼす可能性があったとの評価もある一方で、実際には多くの課題を抱えていました。約2,500キロメートルの距離を超えて東南アジアから日本本土に到達する過程で、搭載した燃料のほとんどを消費することが懸念されていました。さらに、制空権を失った後に、燃料を満載し低速で鈍重なこの機体が連合国の戦闘機から逃れられるかは、極めて難しい状況でした。そのため、一部では「ほとんど正気の沙汰とは思えない」といった否定的な見解も寄せられました。

要目

• - 全長: 19.92m
• - 全幅: 35.00m
• - 全高: 5.90m
• - 主翼面積: 112.5m²
• - 自重: 7,080~8,000kg
• - 全備重量: 10,380~12,500kg
• - エンジン: ハ26-IIまたはハ102空冷式複列星型14気筒 940~1050hp ×2
• - プロペラ: ハミルトン定速三翔 D=2.90m
• - 巡航速度: 180~220km/h
• - 最高速度: 270~300km/h
• - 実用上昇限度: 5,000m
• - 上昇時間: 6分16秒/2,300m
• - 航続距離: 1,500~2,500km
• - 乗員: 4~5名 + 兵員40名
• - 積載量: 3,300~4,500kg

このように、キ105は開発の背景や計画、運用状況に多くの困難を抱えた特異な機体として歴史に名を刻むこととなりました。

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