キ64 (航空機)

キ64戦闘機の概要

キ64は、第二次世界大戦において日本陸軍のために試作された戦闘機であり、その開発は川崎航空機によるものでした。設計主務者には土井武夫技師が名を連ねています。この機体は、特にスピードや性能の面で意欲的な試みを多く取り入れており、戦争中における航空機開発の一端を示すものとなっています。

開発の背景

1940年8月、陸軍から発表された時速700 kmを目指す重戦闘機の要求に応じて、川崎航空機はキ64の開発に着手しました。実は、川崎は1939年から液冷式エンジンを串型に配置した高速機の研究を行っており、陸軍の指示を受けてその研究が実を結んだ形です。開発の当初段階では1942年3月に試作1号機が完成し、続いて12月までに審査が完了する見込みとされていましたが、技術的な障害から進捗が遅れ、実際の完成は1943年に持ち越されました。

機体の特徴

キ64の注目すべき点は、エンジン配置に関する革新です。機首と操縦席の後ろに配置されたハ40エンジンは、合計で2,350 hpの出力を誇り、二重反転プロペラが装備されていました。この設計により、飛行速度の向上が期待されました。また、機体の冷却方式として、翼面蒸気冷却装置を採用しており、従来の冷却器と異なり、機体外部に露出していないのも特徴でした。主翼には高性能なLB層流翼が使用されており、当時の技術を最大限に活かした設計がされています。

航空評論家の小川俊彦は、キ64が当時の技術的限界を超えた設計であり、もしエンジン開発も進んでいたなら、最高速度が800 km/hに達する可能性もあったとも指摘しています。

試験飛行とその後

1943年12月、キ64は初飛行に成功しましたが、5回目の飛行中にエンジンから火災が発生し、緊急着陸を余儀なくされました。この事故により、胴体と脚部が損傷してしまいました。その後、必要な修理が行われましたが、更なるエンジンやプロペラの改修が必要であり、飛行テストは一時中断となります。悪化する戦局の影響により、改修作業は進まず、結局キ64は終戦を迎えるまでにほとんど進展が見られませんでした。

結末と評価

川崎航空機は、試作1号機の後にさらに3機を製作する予定でしたが、実際に完成したのは1機のみでした。キ64は、当時の日本の航空工業の技術水準を反映したものであり、その要求性能は過剰であったと言えます。実際、同時期に開発が進められていた高速実験機の研三に比べても、要求される性能が遥かに高かったことが影響しました。その結果、キ64は幻の高性能機として歴史に名を刻むこととなったのです。

戦後のアメリカ軍による調査では、キ64のエンジン配置や翼面冷却の方法は、日本の航空機の中で特に優れた点であると評価され、機体構造もアメリカ機と比較して遜色がないものとされました。これにより、キ64の設計は一定の評価を受けることとなり、その革新性は当時の航空技術の一つの到達点を示すものとして後世に残ることとなりました。

諸元

最後に、キ64の基本的な諸元は次の通りです。全長11.03 m、全幅13.50 m、全高4.25 m、主翼面積は28.00 m2です。最大速度は780 km/h、実用上昇限度は12,000 m、航続距離は1,000 kmです。武装には20mm機関砲を搭載可能で、乗員は1名の仕様です。

このように、キ64は日本の航空業界の挑戦と、その限界を試みた機体であり、戦後の航空史にも何らかの影響を残したと言えるでしょう。

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