キ91 (航空機)

キ91：大型戦略爆撃機の開発史

第二次世界大戦中の1943年、日本陸軍が川崎航空機に対し、長距離戦略爆撃機としての開発を依頼したのが「キ91」です。この機体は、陸軍版の四発大型爆撃機として設計され、特に航続距離や搭載能力に優れた設計が求められました。

背景と開発のキックオフ

当初、陸軍は「キ85」を開発中でしたが、原型機の性能不足により1943年7月に試作中止が決定しました。これを受けて新たに川崎に対しキ91の開発指示が出され、土井武夫技師を中心に設計チームが組まれます。

キ91の開発においては、最大高度10,000mでの速度580km以上、爆弾4,000kgでの航続距離9,000km以上という厳しい要件が課されました。また、最大8,000kgの爆弾を搭載でき、武装には20mm機関砲を12門搭載することが想定されていました。このように、キ91は非常に大規模な機体として設計されており、全長33.35m、全幅48.0m、全高10.0m、全備重量58,000kgという迫力のあるスペックを持つことが期待されていました。

設計の進展と技術の壁

キ91の設計は1943年6月から始まり、同年4月と5月には実物大モックアップも完成し、良好な審査結果が報告されました。しかしながら、高度での飛行を実現するためには気密室の技術が欠かせず、この点では当時の日本の航空業界はアメリカに大きく後れを取っていました。アメリカのB-29は既にこの技術を搭載し、高高度での飛行が可能だったのです。

1944年、試作工場が岐阜に設立され、修正された質材の確保が進む予定でしたが、戦況の変化とともに状況は厳しくなります。アメリカ軍による本土爆撃が激化し、必要な材料が不足し、新型の発動機の開発が遅れるなど、キ91の開発は行き詰まりを見せます。

開発中止と戦後の展望

1945年2月、陸軍はついにキ91の開発中止を決定しました。この時点で設計は約60%完了していましたが、戦争の終結前に試作機が完成することは見込まれず、仮に完成しても戦局を考慮すると実際の運用は困難であったでしょう。工場に集められた物資は、戦後になって民間の自動車部品などに転用されました。

諸元と性能

• - 全長：33.35 m
• - 全高：10.00 m
• - 全幅：48.00 m
• - 翼面積：224.0 m²
• - 自重：34,000 kg
• - 全備重量：58,000 kg
• - 最高速度：570 km/h（高度10,000m）
• - 上昇限度：13,500 m
• - 航続距離：9,000 km（爆弾4t搭載時）
• - 発動機：三菱「ハ214ル」 空冷星型複列18気筒（2500 hp × 4基）
• - 乗員：8名
• - 武装：20mm機関砲 × 9門、最大爆弾搭載量8,000 kg

このように、キ91は戦略爆撃機としての高い性能が期待される一方で、技術的挑戦や戦況に悩まされ、結果的に量産には至らなかった重要な計画でした。

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