ギボウシラン

ギボウシラン（擬宝株蘭）

概要

ギボウシラン（学名：Liparis auriculata）は、ラン科のクモキリソウ属に属する多年生植物です。一般的には「擬宝株蘭」とも呼ばれ、その特異な葉や花が魅力的です。この植物は、特に湿度の高い環境に生育し、北海道から九州にかけて広がっている姿を見ることができます。最近では、環境省による絶滅危惧IB類に指定されており、その保護が急がれています。

特徴

ギボウシランの特筆すべき特徴は、その葉の形状です。茎は卵型をしており、葉は茎の基部に二枚生える形で、長さは5-12cm、幅は3-8cmほどです。葉は広卵形で、先端は鋭く、基部は心形を持ちます。葉の表面には深い葉脈があり、縦じわが目立つため、ギボウシに似ていることがこの名称の由来となっています。

花期は7月から8月にかけてで、花茎は直立し、高さは15-30cmに達することがあります。先端に淡い黄緑色の花を5-25個つけ、暗緑褐色の花序を形成します。苞は先端が鋭い披針状三角形で長さは2.5mmほどあり、萼片は線状に長い楕円形をしていて、淡緑色で縁が外側に向かって巻いています。側花弁は線形で紫色がかった緑色をしており、唇弁は倒卵形で縁に細かい歯牙があります。唇弁の色は淡緑色ですが、中央部分には暗紫色の帯状の部分があります。

生育環境

この植物は国内では、主に冷温帯から暖温帯の常緑広葉樹林内で、湿度の高い林床や湿原に生育しています。群生することもあるため、見つけやすいスポットもあります。また、国外では台湾や済州島にも分布が見られます。

学名の混乱

ギボウシランという学名の由来には、過去に混乱がありました。かつてはLiparis auriculataはクモキリソウに使用されていましたが、前川文夫が1936年に行った調査によって、この名称が本種に適用されるべきだという発表がありました。その結果、クモキリソウは新たにLiparis kumokiriと名付けられました。

保全状況

日本でのギボウシランの現状は、環境省のレッドリストにおいて絶滅危惧IB類（EN）に指定されています。これは、この植物が生息する環境の変化や人間の活動によって、その数が減少しているためです。そのため、保護活動が重要であると考えられています。

参考文献

• - 牧野富太郎原著 大橋広好ら編『新牧野日本植物圖鑑』（2008年）
• - 中島睦子著『日本ラン科植物図譜』（2012年）
• - 遊川知久解説他『日本のランハンドブック1』（2015年）
• - 大橋広好ら編『改訂新版 日本の野生植物 1』（2015年）
• - 環境省のレッドデータ検索システム

ギボウシランは、美しい花と独特の葉を持つ素敵な植物です。その保護のためには、私たちの関心と理解が欠かせません。

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