ギボウシ

ギボウシ（擬宝珠）

ギボウシは、キジカクシ科リュウゼツラン亜科ギボウシ属（学名：Hosta）に分類される多年草の総称です。日本を含む東アジアが原産で、山間部の湿地や林縁に自生しています。古くから食用や観賞用として親しまれており、その美しい葉や花は多くの人々を魅了しています。

名称の由来

ギボウシの名前は、蕾や包葉に包まれた若い花序の形が、橋や寺院の装飾に用いられる擬宝珠に似ていることに由来します。地方によっては、ギンボ（青森県）、タキナ（高知県）など様々な呼び名があります。英語では plantain lily と呼ばれますが、これは葉の形がオオバコに似ていることに因んでいます。また、アメフリバナ、ウリッパ、ミズウルイなど、地域ごとに異なる愛称で親しまれています。

形態と生態

ギボウシの葉は、根元から伸びる長楕円形の葉柄と、太い中央脈が特徴です。夏になると、長い花茎を伸ばし、総状[[花序]]に青色（品種によっては白色）のラッパ状の花を咲かせます。受粉はマルハナバチなどの大型ハナバチによって行われます。果実は3裂する朔果ですが、栽培品種では結実しないものも多く見られます。

分布

ギボウシは東アジアを原産とし、日本では雑木林や草原、谷間など、比較的湿った場所に自生しています。

人間との関わり

食材として

日本では、オオバギボウシなど約20種が自生しており、特に東北地方や中部地方の一部では、ウルイ、ギンボ、タキナなどの名で山菜として親しまれています。若葉や葉柄が食用にされ、独特のぬめりと癖のない味わいが特徴です。サラダ、浅漬け、油炒め、味噌和え、酢味噌和え、味噌汁、混ぜご飯、巻き寿司など、様々な料理に利用されます。また、花は天ぷらや酢の物としても楽しめます。茎葉を乾燥させたものは「やまかんぴょう」と呼ばれます。ただし、新芽は有毒植物のバイケイソウに似ているため、誤食に注意が必要です。

園芸植物として

江戸時代には、日本で多くの変異個体が園芸品種として固定されました。その後、シーボルトによってヨーロッパに紹介され、ヨーロッパでも多くの品種が育成されるようになりました。現在では、世界中で多様な品種が栽培されており、葉の色や形、大きさ、花の色など、バラエティ豊かな姿を楽しむことができます。ギボウシの花言葉は「落ち着き」「沈静」「静かな人」です。

下位分類

ギボウシ属には約40種が存在しますが、種間雑種が多く、分類には諸説あります。代表的な種としては、カンザシギボウシ、ツボミギボウシ、サガエギボウシ、レンゲギボウシ、ヒュウガギボウシ、スダレギボウシ、キヨスミギボウシ、イワギボウシ、ミズギボウシ、ケイリンギボウシ、トウギボウシ（オオバギボウシ）、コバギボウシ、スジギボウシ、ムラサキギボウシなどがあります。これらの品種はそれぞれ異なる特徴を持ち、園芸の世界では非常に人気があります。

脚注

参考文献

篠原準八『食べごろ 摘み草図鑑：採取時期・採取部位・調理方法がわかる』講談社、2008年10月8日、18頁。ISBN 978-4-06-214355-4。
平野隆久写真「ギボウシ属 Hosta」『野に咲く花 : 写真検索』林弥栄監修、門田裕一改訂版監修（増補改訂新版）、山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑〉、2013年、78-79頁。ISBN 978-4-635-07019-5。
永田芳男写真 著「ギボウシ属 Hosta」、畔上能力編・解説 編『山に咲く花 : 写真検索』門田裕一改訂版監修（増補改訂新版）、山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑〉、2013年、148-150頁。ISBN 978-4-635-07021-8。

関連項目

草本植物

外部リンク

"(属名) Hosta Tratt". Germplasm Resources Information Network (GRIN) online database (英語). 2013年12月19日閲覧。
"Hosta Tratt" (英語). Integrated Taxonomic Information System. 2013年12月19日閲覧。
"Hosta". National Center for Biotechnology Information（NCBI） (英語).
"Hosta" - Encyclopedia of Life (英語)
米倉浩司; 梶田忠 (2003-). “BG Plants簡易検索結果表示”. 「BG Plants 和名−学名インデックス」（YList）. 2013年12月19日閲覧。
波田善夫. “ユリ科”. 植物雑学事典. 岡山理科大学生物地球学部. 2013年12月19日閲覧。

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