ギャロップ (ダンス)

ギャロップ（Galop）とは

ギャロップ（Galop）は、1820年代にオーストリアのウィーンを中心に大流行したダンスの一種です。その名前は、馬が最も速く走る様子を指す英語の「Gallop」に由来しています。英語ではダンスを指す際に綴りから「l」を一つ取り去り「Galop」と表記されることが多いですが、ドイツ語では馬の疾走もダンスも同じ「Galopp」という綴りを用います。

歴史と特徴

このダンスが特に人気を集めたのは1820年代のウィーンでした。その踊り方には、際立った特徴があります。一組の男女が互いに手を取り合い、巨大な輪を形成して、驚くほど速いペースで回転し続けるというものです。その勢いは非常に激しく、ダンス中に相手の靴を踏んでしまったり、衣服が乱れることは日常茶飯事でした。さらに、踊っている最中にカツラが飛んでいったり、最悪の場合には参加者が将棋倒しになってしまうほどの激しさだったと伝えられています。あまりの速さと激しさから、息切れや呼吸困難に陥る人もいたと言われ、その健康への悪影響が懸念された結果、「健康を損なう恐れがある」という理由で一時期は禁止されたほどでした。

他のダンスとの比較

同じく速いテンポを持つダンスとしてポルカ・シュネルがありますが、ギャロップとはいくつかの点で異なります。速度という面では両者に大差ありませんが、ポルカ・シュネルは人間の自然な歩調を基盤とした動きが主体であり、また踊るペアがそれぞれ独立して動くのが一般的です。対してギャロップは、文字通り馬のギャロップのような疾走感を表現するかのように、手を取り合って一体となり、勢いよく回転し続ける点が大きな違いです。

主な楽曲

ギャロップは多くの作曲家によって手がけられ、数々の作品が残されています。代表的なものには以下のような曲があります。

ヨハン・シュトラウス1世
『ため息のギャロップ』（op.9）
『ヴィルヘルム・テル・ギャロップ』（op.29b）
『若人の情熱』（op.90）
『ジプシー・ギャロップ』（op.108）
ヨーゼフ・ランナー
『タランテラ・ギャロップ』（op.125）
ヨハン・シュトラウス2世
『山賊のギャロップ』（op.378）
『クリップ・クラップ・ギャロップ』（op.466）
ハンス・クリスチャン・ロンビ
『シャンパン・ギャロップ』（op.14）
フィリップ・ファールバッハ2世
『コウノトリ』（op.149）

これらの楽曲は、ギャロップというダンスが当時の社会でいかに大きな影響力を持っていたかを示しています。その圧倒的なスピードと熱狂は、ウィーンの社交界に強烈な印象を残しました。

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