ギヨーム・テル (戦列艦)

フランス海軍の戦列艦「ギヨーム・テル」の生涯

ギヨーム・テル（Guillaume Tell）は、フランス海軍が誇る80門のトナン級戦列艦の一隻として建造されました。その名が歴史に刻まれたのは、1798年8月1日に発生したナイルの海戦です。この海戦でフランス艦隊は壊滅的な打撃を受けましたが、ギヨーム・テルは勇敢にも戦場からの脱出に成功した数少ない艦艇の一つでした。

ナイルの海戦からの脱出、そしてマルタへ

ナイルの海戦後、フリゲート戦隊の司令官であったデニス・デクレ海軍少将は、旗艦をギヨーム・テルに移し、残存のフランス艦隊を率いてマルタへと移動しました。マルタは、当時フランス軍が占領していた重要な拠点でした。

イギリス海軍との最後の戦い

1800年3月30日午後11時、デクレ少将が座乗し、ソルニエ艦長が指揮するギヨーム・テルは、トゥーロンへの帰還を目指してマルタ港を出港しました。しかし、その行く手にはイギリス海軍のマルタ封鎖艦隊が待ち構えていました。

翌3月31日午前11時55分、ギヨーム・テルはイギリス海軍の封鎖艦隊に発見され、正午を回った12時30分から、イギリス海軍の64門艦「ライオン」、36門フリゲート「ペネロピ」、80門艦「フードロイヤント」、そしてブリッグ「ヴィンセゴ」（ジョージ・ロング艦長）との間で激しい交戦が開始されました。数に勝るイギリス艦隊に対し、ギヨーム・テルは果敢に戦いましたが、9時間に及ぶ激戦の末、ついに力尽きました。マストは打ち倒され、搭載されていた大砲の半数が使用不能となり、さらに200名もの乗員が死傷するという大損害を被ったギヨーム・テルは、ついに降伏を決意しました。

イギリス海軍「マルタ」として

捕獲されたギヨーム・テルは、その後イギリス海軍に編入され、「マルタ（HMS Malta）」と改名されました。イギリス海軍の一艦として再出発した「マルタ」は、フィニステレ岬の海戦など、数々の海戦に参加し、その生涯を終えました。

ギヨーム・テルの生涯は、フランス革命戦争からナポレオン戦争へと続く激動の時代を象徴しています。フランス海軍の誇りであった戦列艦が、敵国に捕獲され、その名を改めて戦い続けた事実は、当時の国際関係の複雑さを物語っています。

関連事項

ナイルの海戦 (Battle of the Nile)
フィニステレ岬の海戦 (Battle of Cape Finisterre) - イギリス艦「マルタ」として参戦
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