ギルタブルル

ギルタブルルは、バビロニア神話に登場する半人半獣の怪物で、シュメール語で「サソリ人間」を意味します。その異形な姿は、神話世界において独特の存在感を放っています。

ギルタブルルの外見的特徴

ギルタブルルの姿は、複数の要素が組み合わさって構成されています。一般的には、以下の特徴を備えているとされます。

人間の顔と体: 角冠と顎鬚を持つ人間の顔は、神聖さや威厳を象徴しています。
鳥の体: 鳥の胴体と鉤爪は、空を飛翔する能力や、鋭い攻撃力を連想させます。
サソリの尾: サソリの尾は、毒針を持ち、危険な存在であることを示唆します。
蛇頭の男性器:蛇の頭を持つ男性器は、豊穣や生命力を象徴すると考えられます。

また、翼を持つ姿で描かれることもあり、その容貌は死神を思わせるほど恐ろしいとも言われています。人の顔、鳥の胴体と脚、サソリの尾を併せ持つ人間の絵も存在しますが、これらがギルタブルルに分類されるかは定かではありません。

ティアマトの怪物とギルガメシュ叙事詩

ギルタブルルは、原初の女神ティアマトが生み出した11の怪物の1つとして知られています。これらの怪物たちは、マルドゥク神によって退治されました。しかし、ギルタブルルは単なる敵役ではなく、一種の聖獣としての側面も持っています。

『ギルガメシュ叙事詩』では、男女一対のギルタブルルが天界と冥界に通じるマーシュ山の番人として登場します。彼らは、神聖な場所を守護し、許可なく侵入する者を阻む役割を担っていると考えられます。

美術におけるギルタブルル

ギルタブルルの姿は、ウル第三王朝時代やアッカド時代の美術に初めて現れ、新アッシリア、新バビロニア時代に広く使われるようになりました。メソポタミアの美術において、ギルタブルルは神話的な存在として、重要な役割を果たしていたことが伺えます。

ギルタブルルの象徴性

ギルタブルルは、その複合的な姿から、様々な解釈が可能です。神性と獣性、善と悪、生と死など、相反する要素を内包しているとも考えられます。また、天界と冥界の境界を守る存在として、秩序と混沌の均衡を保つ役割を担っているとも解釈できます。

ギルタブルルは、バビロニア神話における独特な存在であり、その異形な姿と象徴性を通じて、古代の人々の世界観や信仰を垣間見ることができます。

参考文献

MIHO MUSEUM編『メソポタミアの神々と空想動物』（アンソニー・グリーン監修, 山川出版社, 2012年7月）
「幻想動物事典」新紀元社
「オリエントの神々」新紀元社
ePSD (2006). ePSD: The Electronic Pennsylvania Sumerian Dictionary. University of Pennsylvania Museum of Anthropology and Archaeology.

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