ギルバート (単位)

ギルバート：磁場の強さを測る単位

ギルバート (Gilbert, 記号: Gb) とは、電磁単位系、特にガウス単位系において用いられる起磁力の単位です。1930年、国際電気標準会議によって正式に採用されました。その名称は、磁気に関する先駆的な研究で知られる16世紀のイギリスの物理学者、ウィリアム・ギルバートに由来しています。

起磁力とは？

起磁力とは、磁場によって磁極間に働く力、あるいは磁場を発生させる原因を表す物理量です。磁石や電磁石などの磁場源が、周囲にどれだけの磁場を作り出せるかを表す指標と考えることができます。磁場の強さと、磁場が及ぶ経路の長さによって決まります。

ギルバートの定義

ギルバートは、磁場の強度の単位であるエルステッド (Oe) と、長さの単位であるセンチメートル (cm) を用いて定義されます。具体的には、均一な磁場において、磁場の向きに沿って1エルステッドの磁場の中で1センチメートル離れた2点間の起磁力が1ギルバートとなります。数式で表すと、以下のようになります。

`Gb = Oe × cm`

ここで、エルステッドは、力のCGS単位であるダイン (dyn) を用いて`Oe = dyn^(1/2)/cm` と表すことができます。そのため、ギルバートは `Gb = dyn^(1/2)` とも表現できます。

より一般的には、磁場強度ベクトル H と経路lを用いて、起磁力 F は線積分によって以下のように表されます。

`F = ∫_C H ⋅ d**l`

この式からも、起磁力の次元が[磁場の強度] × [長さ] であることがわかります。

ギルバートと他の単位との関係

国際[単位系]では、磁場の強度はアンペア毎メートル(A/m)で表されます。1エルステッドはおよそ79.577 A/m に相当するため、1ギルバートはおよそ0.79577 A に相当します。

興味深いことに、電磁単位系では、起磁力は電流と同じ次元を持ちます。そのため、ギルバートと電流の単位であるビオ(Bi)はどちらも `dyn^(1/2)` という同じ次元を持ちます。しかし、これは同じ単位が異なる物理量を表していることを意味するものであり、ギルバートとビオを直接比較することはできません。両者の関係付けには、コイルの巻数などの幾何学的な因子が必要となります。これは、SI単位系においても同様で、アンペアターン(AT)が起磁力の単位として用いられてきた歴史があります。

まとめ

ギルバートは、電磁単位系における起磁力の単位として、磁場の強さと距離から計算される重要な単位です。SI単位系への換算や、電流との関係を理解することで、電磁気学におけるより深い理解につながります。ガウス単位系を用いた古典的な電磁気学の文献を理解する上でも、ギルバートの概念は不可欠です。現在ではSI単位系が広く用いられていますが、歴史的な背景や、特定の分野での計算においては、ギルバートを含む電磁単位系を用いる場合もあります。

もう一度検索