ギースル・エジェクタ

ギースル・エジェクタ (Giesl Ejector)

ギースル・エジェクタは、蒸気機関車における煙突装置の一種です。この独特な装置は、オーストリアのウィーン工科大学で教授を務めていたアドルフ・ギースル・ギースリンゲンによって開発され、従来の煙突に対する革新的なアプローチを提供しました。オーストリア国鉄において広く採用されたことからも、その有用性が裏付けられています。

構造と機能

ギースル・エジェクタは、煙室内に一列に設置された特殊なブラスト管と独特な形状の煙突から成り立っています。一般的な煙突とは異なり、長円形で側面から見ると逆台形の構造をしています。この形状によって、シリンダから送られた蒸気を効果的に排出することができます。

蒸気の排出に際しては、通気量に応じて吐き出し面積を調整できるため、排出効率が非常に高まります。また、燃焼ガスの流れを大煙管で増幅することで、燃焼効率が向上し、蒸気の温度が上昇します。結果として、石炭の消費量が削減され、牽引力が増し、火の粉の発生も抑えられます。実験では、石炭の節約効果が9から15％に達することが確認されています。

ギースル・エジェクタのもう一つの特徴は、煙突の排気機能にあります。力行時には全体から煙が排出されますが、停車時などの低負荷時には煙突の特定の部分からのみ排気される点が、従来の煙突とは異なる点です。

日本における導入

日本国有鉄道（国鉄）は、1963年にD51形蒸気機関車に対応したギースル・エジェクタを試験的に導入しました。長野工場で349号機に取り付け、中央本線での試運転を行いました。さらに、郡山工場でも357号機に装着され、その後理研金属工業が製造することとなり、D51形蒸気機関車では合計34両に取り付けが行われました。

なお、この装置は「ナメクジ形煙突」以外の100番台から1100番台までのさまざまなタイプに対応しており、特に北海道の追分機関区に重点的に配置されていました。しかし、無煙化の進展により、ギースル・エジェクタを装備した機関車は36両に限られました。

使用された機関車

国鉄D51形蒸気機関車は、ギースル・エジェクタ装置が装備された主な機材です。特に、1975年には国鉄最後のD51牽引旅客列車や貨物列車がギースル装備の機関車によって運行され、国鉄の蒸気機関車の歴史において重要な役割を果たしました。

創作物における影響

ギースル・エジェクタは、創作物にも取り上げられています。特に「汽車のえほん」では、ピーター・サムというキャラクターがこの装置を装備することでパワーアップし、ストーリー展開に影響を与えています。

このように、ギースル・エジェクタは蒸気機関車の設計や運用に革新をもたらした重要な装置であり、その工学的な意義は過去の鉄道技術の発展に大きく寄与しました。

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