クイーンズブリッジ団地

クイーンズブリッジ団地：アメリカ最大の公営住宅

クイーンズブリッジ団地は、ニューヨーク市クイーンズ区ロングアイランドシティに位置する、アメリカ合衆国最大の公営住宅です。1939年に建設され、3142戸の住居を擁する巨大な団地は、ニューヨーク市住宅公社によって運営されています。

所在地と特徴

ロングアイランドシティ地区のバーノンブルバードと21番通りに挟まれた場所に位置し、クイーンズ区最大の22棟からなる住宅団地です。名称は、すぐ南にあるクイーンズボロ橋（59番ストリート橋）に由来します。団地は南北に分かれており、それぞれ40番アベニューと41番アベニューに面しています。地下鉄Fルートの21丁目-クイーンズブリッジ駅が最寄りで、団地の東地区へのアクセスが可能です。この団地は、名前を冠した駅を持つ唯一のニューヨークの公営住宅です。

建物

6階建て96室の建物は、連結した「Y」字型が特徴的です。この形状は、採光性を高めるために考案されました。建設費を抑えるため、エレベーターは1階、3階、5階のみに停止する設計でしたが、後に各階に停止するように改修されました。外観は、同時期に建てられた他の公営住宅と同様に、灰色がかった茶色で、老朽化が進んでいます。足元から1m20cmの高さまで赤色の塗装が施され、統一感を出しています。団地の入り口には、「クイーンズブリッジ北/南団地 NYCHA」という標識が設置されています。

近年、エレベーターの改修や台所のリフォーム、霜のつかない冷蔵庫の設置などが行われました。2000年には、3000戸の浴室・洗面所が改修され、住環境が改善されました。

人種構成の変化

1950年代には、住宅公社が人種構成のバランスを取るため、年間収入が3000ドルを超える世帯を中流向けの団地に移し、アフリカ系アメリカ人やラテン系の住民を増やしました。この政策は、低収入のアフリカ系アメリカ人やラテン系の世帯に安全な住居を提供する一方で、子供たちの間で人種的な対立を引き起こすという側面もありました。

娯楽施設と公園

当初の建設計画では、ショッピングセンターや託児所などの施設も予定されていましたが、予算の関係で実現しませんでした。1950年代には、保育室、図書館、講堂を持つ地域会館や、ローラースケート場、スタジオ設備、食堂を備えた体育館が建設されました。ここでは、タップダンス、バレエ、芸術活動、ビリヤード、卓球など、様々な活動が行われました。また、ボーイスカウトやガールスカウトの活動場所としても利用されました。住民は、ショッピングセンターの広場で開かれるコンサートを楽しんだり、フレッシュ・エア基金の支援でピークスキル山へ出かけたりしました。

団地内にはバスケットボール場や広場があり、住民の憩いの場となっています。バーノンブルバードを渡ると、野球場、ジョギング場、ピクニックができる芝生広場などがあるクイーンズブリッジ公園があります。この公園は、クイーンズブリッジのリトルリーグの本拠地であり、夏のコンサート会場としても利用されています。かつては「リバーサイド公園」と呼ばれていました。

音楽との関わり

クイーンズブリッジ団地は、数多くのヒップホップアーティストを輩出してきました。マーリー・マールを筆頭に、MCシャン、ロクサーヌ・シャンテ、ナズ、モブ・ディープなど、数々の著名なラッパーがこの団地の出身です。この地域は「ザ・ブリッジ」と呼ばれ、ヒップホップ界に大きな影響を与えてきました。ナズのアルバム「キュービーズ・ファイネスト」は、クイーンズブリッジ団地をテーマにしており、団地のオールスターが集結しています。

クイーンズブリッジ団地は、単なる公営住宅というだけでなく、ニューヨークの歴史と文化に深く根ざした場所なのです。

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