クイーンズベリー公爵

クイーンズベリー公爵：スコットランド貴族の称号

クイーンズベリー公爵（Duke of Queensberry）は、スコットランド貴族に与えられた公爵位であり、その歴史は17世紀に遡ります。この称号は、1684年に初代クイーンズベリー侯爵ウィリアム・ダグラスに授けられたことから始まりました。しかし、継承法の違いにより、クイーンズベリー侯爵とクイーンズベリー公爵の称号は、4代目の公爵を最後に別々の人物が保持することとなり、その後はバクルー公爵が公爵位を継承しています。

クイーンズベリー公爵の歴史

クイーンズベリー公爵家の祖は、第2代ダグラス伯爵ジェイムズ・ダグラスの庶子ウィリアム・ダグラスに遡ります。その子孫は代々、スコットランドのダンフリーズ地方の地主として勢力を持ちました。9代目の当主ウィリアム・ダグラスは、ジェームズ国王をドラムランリグに迎え、ダンフリーズのシェリフなどの官職を務めるなどして、1628年にドラムランリグ子爵、1633年にクイーンズベリー伯爵に叙せられました。これらの爵位には、ダグラスの紋章と姓名を受け継ぐ男系男子に継承させる旨の規定が設けられていました。

初代クイーンズベリー公爵となるウィリアム・ダグラスは、その孫にあたります。彼は政治家として活躍し、スコットランド大蔵卿などの要職を歴任しました。当初はジェームズ7世（イングランド王ジェームズ2世）に仕えましたが、後にウィリアムとメアリーの即位を支持し、王室からの信頼を回復しました。1682年にはクイーンズベリー侯爵に叙せられ、1684年にはクイーンズベリー公爵となりました。これらの爵位には、それぞれ異なる継承規定が設けられていました。

第2代クイーンズベリー公爵ジェイムズ・ダグラスは、名誉革命でウィリアム3世を支持し、スコットランド枢密顧問官となりました。公爵位を相続後は、スコットランド王璽尚書などの要職を歴任し、1707年の合同法成立に尽力しました。その功績により、1708年にはドーヴァー公爵に叙せられました。

しかし、2代公の息子ジェイムズは精神障害者であり、人肉を食らうという異常な行動をとったため、1706年に爵位継承に関する特別措置が取られました。これにより、2代公の死後、クイーンズベリー侯爵位はジェイムズが、クイーンズベリー公爵位はその弟チャールズが継承することとなりました。

3代公チャールズ・ダグラスもまた、政治家として活躍し、ソルウェイ伯爵に叙せられました。1715年にはクイーンズベリー侯爵位も継承し、クイーンズベリー公爵家は再び統一されました。

1778年に3代公が死去すると、ドーヴァー公爵位などのグレートブリテン貴族爵位は断絶しましたが、クイーンズベリー公爵位は第2代クイーンズベリー公爵の弟の孫にあたるウィリアム・ダグラスが相続しました。この4代公は、「Old Q」という渾名で知られ、競馬や演劇のパトロンとして有名でしたが、浪費家としても悪名高かった人物です。

4代公が1810年に死去すると、クイーンズベリー公爵位は、第2代クイーンズベリー公爵の娘の子である第3代バクルー公爵ヘンリー・スコットが継承しました。一方、クイーンズベリー侯爵位は、第2代クイーンズベリー伯爵の弟の来孫にあたるチャールズ・ダグラス準男爵が継承しました。これにより、クイーンズベリー公爵位はバクルー公爵家の称号の一部となり、現在に至っています。

現在のクイーンズベリー公爵

現在のクイーンズベリー公爵は、第12代クイーンズベリー公爵リチャード・モンタギュー・ダグラス・スコットです。公爵位の法定推定相続人は、当代の長男であるダルキース伯爵ウォルター・モンタギュー・ダグラス・スコットです。

クイーンズベリー公爵の歴史は、スコットランド貴族の複雑な継承関係や、政治的な変動を反映しています。この称号は、ダグラス家の興亡と、スコットランドの歴史を物語る貴重な遺産と言えるでしょう。

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