クイーンズベリー侯爵

クイーンズベリー侯爵：スコットランド貴族の爵位

クイーンズベリー侯爵（英語: Marquess of Queensberry）は、スコットランド貴族の侯爵位であり、その歴史は17世紀に遡ります。この爵位は、第3代クイーンズベリー伯爵ウィリアム・ダグラスが1682年に叙爵されたことに始まります。

クイーンズベリー公爵との関係

ウィリアム・ダグラスは1684年にクイーンズベリー公爵にも叙爵されたため、クイーンズベリー侯爵位は公爵位の従属爵位となりました。しかし、1706年にクイーンズベリー公爵位に特別継承権の規定が追加されたことで、1708年から1715年、そして1810年から現在に至るまで、両爵位は分離した状態が続いています。現在、クイーンズベリー公爵位はバクルー公爵家のモンタギュー・ダグラス・スコット家によって女系継承されており、一方、クイーンズベリー侯爵位はダグラス家による男系継承が維持されています。

歴史

クイーンズベリー公爵の従属爵位として

第2代ダグラス伯爵ジェイムズ・ダグラスの庶子ウィリアム・ダグラスの子孫は、代々スコットランドのダンフリーズ、ドラムランリグの地主を務めていました。その9代目の当主ウィリアム・ダグラスは、国王ジェームズ6世をドラムランリグに迎え、ダンフリーズのシェリフなどの官職を務めました。これらの功績により、1628年4月1日にドラムランリグ子爵とホーイック＝ティバーズのダグラス卿、1633年6月13日にクイーンズベリー伯爵に叙爵されました。これらの爵位には、ダグラスの紋章と姓名を受け継ぐ男系男子に継承させる旨の継承規定が設けられていました。

ウィリアム・ダグラスの孫である第3代クイーンズベリー伯ウィリアム・ダグラスは、スコットランド大蔵卿やスコットランド議会国王代理官などの官職を歴任し、1682年2月11日にクイーンズベリー侯爵、ドラムランリグ＝サンクアー伯爵、ニス＝トーソルウォルド＝ロス子爵、キルモント＝ミドルビー＝ドーノックのダグラス卿に叙爵されました。これらの爵位には、すべて「heirs male whatsoever」の継承規定が付与されました。さらに、1684年2月3日にはクイーンズベリー公爵とダンフリーズシャー侯爵に叙爵されました。これらの爵位には、「heirs male of his body」の継承規定が付与されました。

ウィリアム・ダグラスの長男である第2代公・第2代侯ジェイムズ・ダグラスは、名誉革命後のスコットランド政界で活躍し、イングランドとスコットランドを連合させる1707年連合法のスコットランド議会での可決に主導的な役割を果たしました。連合後の1708年5月26日には、ドーヴァー公爵、ビバリー侯爵、リポン男爵に叙爵されています（いずれもグレートブリテン貴族）。

爵位の分離と変遷

第2代公の嫡男である次男ジェイムズ・ダグラスは精神障害者であり、人肉を食らう殺人者であったとされています。そのため、1706年6月17日にクイーンズベリー侯爵位を除く初代公の代に叙された爵位群は、一度王冠に返還され、三男チャールズ・ダグラスに継承させる旨の特別継承権の規定を追加した上で再び与えられました。また、この際に爵位継承範囲を初代伯に遡っての男子もしくは女子の子孫に拡張させる規定も加えられました。

これにより、第2代公の死後、クイーンズベリー侯爵位および初代伯の代に叙された爵位群は次男ジェイムズ（第3代侯）に継承されましたが、クイーンズベリー公爵位以下は三男チャールズ（第3代公）に継承されました。第3代公は、先立つ1706年6月17日にソルウェイ伯爵、ティバーズ子爵、ロッカービー＝ダルヴィーン＝ソーンヒルのダグラス卿に叙爵されていました。

1778年に第3代公（第4代侯）が死去した際、生存している男子がなく、第2代公の男系男子は絶えました。そのため、第2代公の代に叙されたドーヴァー公爵位以下のグレートブリテン貴族爵位、および第3代公が叙されたソルウェイ伯爵以下のスコットランド貴族爵位はここで廃絶となりました。それ以外の爵位は、初代公の次男の孫にあたる第3代マーチ伯ウィリアム・ダグラスに継承されました。

クイーンズベリー侯爵家

1810年に第4代公（第5代侯）が子供なく死去した際、その保有爵位はそれぞれの継承方法に従って分裂しました。ラグラン伯爵位とウィルトシャー州におけるエイムズベリーのダグラス男爵位は廃絶となり、マーチ伯爵位などは第8代ウィームズ伯爵フランシス・ダグラスに継承されました。一方、クイーンズベリー公爵位などは、1706年に追加された女系継承を認める特別継承権の規定に基づいて第3代バクルー公爵ヘンリー・スコットに継承されました。

そして、追加が行われなかったクイーンズベリー侯爵位などは、初代伯に遡っての分流である第5代 (キルヘッドの) 准男爵チャールズ・ダグラスに継承されることになり、クイーンズベリー侯爵家が誕生しました。その最初の当主である第6代侯は、スコットランド貴族の貴族代表議員としてイギリス貴族院議員を務め、後に連合王国貴族爵位ソルウェイ男爵に叙せられました。

第6代侯の死後、弟のジョン・ダグラスが第7代侯を継承し、以降、彼の直系の男系男子によって爵位は継承されています。

第9代侯ジョン・ダグラスはボクシング愛好家であり、「クイーンズベリー・ルール」の制定を後援し、近代ボクシングの発展に貢献した人物として知られています。

2016年現在の当主は、その息子である第12代侯デイヴィッド・ダグラスです。

現当主の保有爵位

第12代クイーンズベリー侯爵デイヴィッド・ダグラスは、以下の爵位・準男爵位を保有しています。

第12代クイーンズベリー侯爵
第14代クイーンズベリー伯爵
第14代ドラムランリグ子爵
ホーイック＝ティバーズの第14代ダグラス卿
* (キルヘッドの)第11代準男爵

クイーンズベリー侯爵家は、スコットランドの歴史と密接に結びついた名門貴族であり、その爵位は今日まで受け継がれています。

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