クイーン・メリー (巡洋戦艦)

クイーン・メリー (HMS Queen Mary)

クイーン・メリーは、イギリス海軍の巡洋戦艦であり、ライオン級巡洋戦艦の3番艦に該当します。この艦は1910年の建造計画に基づいて建設されたもので、姉妹艦であるライオンとプリンセス・ロイヤルとは副砲の配置や排水量が異なる点が特徴です。特に、クイーン・メリーは改良が施され、その結果、控えめながらも排水量が他の姉妹艦より400トン増加しました。

艦歴

1913年9月に就役した後、クイーン・メリーは第一次世界大戦の開戦と共にグランド・フリート（Grand Fleet）に所属することとなりました。この艦は、艦砲弾の重量化、後部艦橋の設置、船首楼甲板への装甲付与など、当時の海軍戦略に対応するための多くの改良が行われました。

1914年8月28日には、ヘルゴラント・バイト海戦に参加しましたが、1915年1月24日に発生したドッガー・バンク海戦には修理中であったため出撃できませんでした。その後、同年12月には方位盤照準装置が装着され、船体の拡強工事も施されるなど、戦闘能力を高める努力が続けられました。

ユトランド沖海戦での最期

1916年2月、下村忠助少佐が観戦武官としてクイーン・メリーに加わりました。そして、5月31日に行われたユトランド沖海戦では、ビーティー提督が指揮する第1巡洋戦艦戦隊の一員としてドイツ帝国海軍の艦隊と接触します。この時、クイーン・メリーはドイツ艦隊の中で特に強力な巡洋艦群と交戦し、特にザイドリッツとデアフリンガーとの連続的な砲戦に臨みました。

砲火の中で、クイーン・メリーは150発以上の砲弾を放ち、敵艦に命中させるも、午後4時30分頃にデアフリンガーからの30.5センチ砲弾が命中します。その結果、火薬庫が誘爆し、艦首から前部マストまでが粉々になり、わずか38分で沈没してしまいました。この戦闘では、乗組員の1,266人が命を落とし、助かったのは僅か20人という悲劇的な結果を招いただけでなく、下村少佐も戦死しました。

このユトランド沖での損失は、イギリス海軍にとって大きな衝撃であり、彼らが試みていた戦艦と巡洋戦艦の防御設計には重大な欠陥があることを浮き彫りにしました。実際、戦艦・巡洋戦艦の主砲はこの頃から射程距離が大幅に増加しており、それに対し甲板が適切に装甲されていなかったため、多くの艦が吹き飛ばされる事態となりました。この教訓は、以降の艦設計に多大な影響を及ぼし、他国の艦隊においても反映されることとなります。

最終的に、クイーン・メリーの戦没とその艦歴は、イギリス海軍における設計哲学への疑問を促し、防御と攻撃能力のバランスを再評価させる切欠となったのです。クイーン・メリーと彼女の姉妹艦の運命は、その後の艦艇設計における重要な転換期を示しています。

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