クノ・マイアー

クノ・マイアー：ケルト学の先駆者

クノ・マイアー（Kuno Meyer、1858年12月20日 - 1919年10月11日）は、19世紀後半から20世紀初頭にかけて活躍したドイツのケルト言語学者、文学者です。彼は生涯にわたり、ケルト学の学術誌を創刊・編集し、古アイルランド語研究の発展に大きく貢献しました。その研究は、言語学のみならず、アイルランドの歴史、文学、文化の研究にも大きな影響を与えています。

生涯と業績

ハンブルクで生まれたマイアーは、ライプツィヒ大学でエルンスト・ウィンディッシュに師事し、ケルト学の研究を始めました。1884年には博士号を取得し、その後、リヴァプール大学で教鞭をとる傍ら、古アイルランド語やケルト言語に関する研究を進めました。

マイアーの業績の中でも特に重要なのは、ケルト学関連の学術雑誌の創刊と編集です。彼は、L・C・シュテルンとともに「ツァイトシュリフト・フュア・ケルティッシュ・フィロロギー」を、ホイットリー・ストークスとともに「アーヒーフ・フュア・ケルティッシュ・レクシコグラフィー」を創刊し、ケルト学研究の発展に貢献しました。また、ダブリンにアイルランド語学習校を設立し、その機関誌「エーリウ」を創刊するなど、アイルランドにおけるケルト学の普及にも尽力しました。

彼はアイルランド古詩選を刊行し、古代の詩文学を広く紹介しました。古・中アイルランド語の物語・伝説の原文・英訳を多数発表し、多数の論文における幅広い題材は、人名・地名や法制度の考察にまで及びました。

第一次世界大戦と評価

第一次世界大戦中、マイアーはアメリカに滞在していましたが、ドイツ擁護の姿勢を貫いたため、英国やアイルランドで反感を買い、ダブリン市とコーク市の自由市民称号を剥奪され、リヴァプール大学の名誉教授職も失いました。しかし、戦後、彼の学術的な功績が再評価され、ダブリン市とコーク市は再び彼に自由市民の称号を授与しました。

ダグラス・ハイド（のちのアイルランド大統領）は、マイアーを「その親愛を感じる人柄は右に出るものなく、彼自身がアイルランドを愛していたことは疑うべくもない」と評しました。また、W・T・コズグレイヴ（のちのアイルランド自由国首相）は、マイアーを「ホイットリー・ストークスの死後、随一のケルト学権威」と称しました。

著作一覧（一部）

1885年： The Irish Odyssey（「アイルランド版オデュッセイア」）
1892年：The Vision of MacConglinne（「マックコングリンの幻想」）、アルフレッド・ナットとの共著。
1894年：The Voyage of Bran（「ブランの航海」）
1896年：Early Relations of the Brython and Gael（「ブリトン人とゲール人の早期の関係」）
1901年：King and Hermit（「王と隠者」）
1905年：Cáin Adamnáin：An Old Irish Treatise on the Law of Adamnan（「アダムナンの法」）
1911年：Selections from Ancient Irish Poetry（「アイルランド古詩選」）
1912年：Sanas Cormaic, an Old Irish Glossary（「コルマクの語彙集」）
1913年：Learning in Ireland in the Fifth Century（「五世紀アイルランドの学問」）
1914年：Über die älteste irische Dichtung（「アイルランド最古の詩について」）

クノ・マイアーは、ケルト学の分野において多大な功績を残した人物として、今日でも高く評価されています。彼の研究は、ケルト文化の理解を深める上で欠かすことのできないものであり、今後のケルト学研究の発展にも大きく貢献するものと期待されます。

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