クバント1

クバント1は、ソビエト連邦によって1987年に打ち上げられた宇宙ステーション・ミールのモジュールです。コアモジュールに次いで2番目に打ち上げられ、ステーションの姿勢制御能力の向上と科学実験の実施を主な目的としていました。クバントとはロシア語で量子を意味します。

設計

クバント1は、円筒形の本体を持ち、前後2箇所にドッキング装置を備えています。これにより、後部ドッキングポートを塞ぐことなく、他のモジュールとの接続が可能でした。内部には2つの与圧された作業スペースと1つの非与圧の実験スペースがあり、様々な観測・実験装置が搭載されていました。

搭載された観測装置には、X線望遠鏡、紫外線望遠鏡、広角カメラ、高エネルギーX線実験装置、X線・ガンマ線検出器などがあり、活動銀河やクエーサー、中性子星といった天体の観測に用いられました。また、電気泳動実験ユニット、酸素発生装置「エレクトロン」、二酸化炭素除去装置などの生命維持装置、そして、6基のジャイロダイン姿勢制御装置が搭載され、ミールの運用を支えました。さらに、太陽電池パネルを装備することで、電力供給能力も強化しました。この太陽電池パネルは、打ち上げ後の1987年6月に取り付けられました。

クバント1自体には推進装置がなかったため、地球周回軌道への打ち上げ後、TKS宇宙船のFGBモジュールを基に設計された推進モジュールFSMによって宇宙ステーションまで輸送されました。FSMは推進システムと電力システムを備えており、クバント1をステーションに送り届けた後、分離・投棄される設計でした。

打上げとドッキング

クバント1は、1987年3月30日にプロトンロケットによってバイコヌール宇宙基地から打ち上げられました。打ち上げから10日後の4月9日には、ミールのコアモジュールの後部ドッキングポートへのソフトドッキングに成功しましたが、ハードドッキングができませんでした。これは、プログレス28が離脱時に残したと思われる異物が原因であり、4月11日に実施された緊急船外活動で、この異物（ゴミ袋と考えられる）が取り除かれ、正常な構造結合を達成しました。その後、FSMは4月12日にクバント1から切り離されて投棄されました。

運用

ミールに組み込まれたクバント1は、その後、様々な構造物が取り付けられ、機能が強化されました。1991年1月には太陽電池パネルの保持構造が、同年7月には「ソフォラ」桁構造が取り付けられました。その後も、姿勢制御装置の取り付け（1992年9月）、ラパナ桁構造の取り付け（1993年9月）、クリスタルモジュールからの太陽電池パネルの移設（1995年5月）、太陽電池パネルの取り付け（1996年5月）、クリスタルから移設した太陽電池パネルの新品交換（1997年11月）、姿勢制御装置の新品交換（1998年4月）が行われました。当初は目立った外部構造を持っていなかったクバント1ですが、最終的には太陽電池パネルと2つの桁構造を持つ複雑なモジュールとなりました。

2001年3月23日、クバント1は他の全てのミールのモジュールと共に大気圏に突入し、その歴史に幕を閉じました。なお、苫小牧市科学センターのミール展示館には、コアモジュールとクバント1の予備機が展示されています。コアモジュールは内部を見学できますが、クバント1は窓から内部を覗き見ることができます。

関連項目

ミール
クバント2
TKS宇宙船

参考文献

“Kvant 1”. NASA - NSSDC. 2008年5月29日閲覧。
* “Kvant-1 module (37KE)”. RussianSpaceWeb.com. 2008年5月29日閲覧。

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