クバント2

クバント2（Квант-2）

ソ連（現ロシア）の宇宙ステーション「ミール」において、重要な役割を担った大型モジュールの一つにクバント2があります。このモジュールは1989年11月26日、強力なプロトンロケットによってバイコヌール宇宙基地から軌道へ打ち上げられました。ミールの中核を成すコアモジュール、そして先行して結合したクバント1に続いて到着した、ステーションにとって3番目の主要な拡張モジュールとなります。

設計と機能

クバント2は、ソ連が開発した多目的補給船TKSを基に設計されました。全長は約13.73メートル、最大直径は約4.35メートルという円筒形構造を持ちます。モジュールの内部は、船外活動専用のエアロック区画、資材や機器を保管する貨物区画、そして様々な科学実験を行うための実験区画という三つの領域に分かれていました。特に貨物区画は、必要に応じて気密ハッチで隔離することで、エアロック区画の予備として機能するよう設計されていた点が特徴です。クバント2がミールに到着する以前は、船外活動を行う際はミール・コアモジュールのドッキングノードを減圧して実施されており、時間と労力を要しましたが、クバント2の専用エアロックにより、より効率的かつ安全な船外活動が可能となりました。

電力供給は、搭載された二枚の大型太陽電池パネルによって賄われ、最大6.9キロワットの電力をステーションシステムや搭載機器へ供給することができました。

機能強化の面では、ステーションの姿勢を安定させるための高性能なジャイロダイン（制御モーメントジャイロ）が6基搭載されました。これはクバント1に続き搭載されたもので、ミールの安定運用に不可欠なシステムでした。また、当時の最新鋭コンピューターであるSalyut 5Bが導入され、従来のArgon 16Bから処理能力が大幅に向上し、複雑な制御やデータ処理を可能にしました。生命維持システムにおいては、尿を再生して飲料水や技術用水に変える装置が搭載され、長期滞在における資源循環能力を向上させました。

さらに、宇宙空間での移動や作業を補助するソ連版の船外活動ユニット（MMU）に相当するバックパック推進装置も格納されていました。科学観測・実験装置も豊富で、高解像度カメラ、分光計、X線センサーといった地球観測や天体観測機器に加え、流体物理実験装置であるVolna 2や、軌道上での鳥類の孵化実験を目的とした孵卵器「Inkubator-2」など、多岐にわたる装置が搭載されており、ミールでの研究活動の幅を大きく広げました。

クバント2と同様にTKSを基に開発されたクバント1モジュールとは、TKS本体の扱いにおいて違いがありました。クバント1では、推進モジュールを含むTKS本体部分はステーションへの物資輸送後、分離・廃棄されましたが、クバント2ではTKSの構造体がそのままミールの一部として恒久的に利用される設計となっていました。

運用

クバント2の打ち上げは1989年11月26日に行われました。当初、ミール本体へのドッキングは12月2日に予定されていましたが、技術的な問題が発生したため、数日遅れて12月6日に成功しました。ドッキング後、クバント2は一時的にコアモジュールの軸線上のポートに結合していましたが、その2日後にはロボットアームを用いて、最終的に側面を向いた別のドッキングポートへと移設されました。

クバント2は、ミール宇宙ステーションがその運用を終えるまでの間、約11年間にわたり不可欠な構成要素として機能しました。船外活動の拠点、生命維持システムの強化、そして多様な科学実験プラットフォームとして、ミールの多機能化と長期滞在能力の向上に大きく貢献しました。

2001年3月23日、ミール宇宙ステーション全体の軌道離脱に伴い、クバント2も他のモジュールと共に大気圏へ再突入し、その役目を終えました。

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