クモ亜目

クモ亜目（Opisthothelae）：クモの進化と多様性を彩るグループ

クモ亜目（Opisthothelae）は、クモ類（クモ目）を分類する主要なグループの一つです。糸疣の位置が腹部後端にあることが大きな特徴で、この特徴から後疣亜目とも呼ばれます。クモ目の大部分を含む一方、ハラフシグモ亜目を除外した分類群です。

糸疣の位置と糸の多様性

クモ亜目の最も顕著な特徴は、糸疣の位置が腹部の後端、肛門の直前にあることです。これは、ハラフシグモ亜目の糸疣が腹部腹面中央にあることと対照的です。この糸疣の位置の違いは、糸を出す際の操作性と密接に関連していると考えられます。腹部後端にある糸疣は、糸の操作を容易にし、より複雑な糸の使用を可能にしていると考えられています。

糸腺の種類もクモ亜目においては多様性を示します。ハラフシグモ亜目の糸腺はほぼ1種類のみですが、クモ亜目ではトタテグモ下目ですでに2種類、クモ下目では4種類以上の糸腺が存在します。糸腺の種類の増加は、糸の性質や機能の多様化に繋がり、多様な巣作りの手法や捕食戦略を生み出しました。

トタテグモ下目とクモ下目の違い

クモ亜目は大きく分けて、トタテグモ下目とクモ下目の2つの下目に分類されます。両者は糸の使用様式に違いが見られます。トタテグモ下目のクモは、巣穴全体に糸を使用し、一部の種では巣穴の入り口から外に向けて捕獲装置を作るなど、糸を積極的に利用します。一方、クモ下目では、より複雑で精巧な網を張るものが多く、その網の構造は種によって多様なバリエーションを示します。

分類体系と進化

古典的な分類では、ハラフシグモ亜目、トタテグモ下目、クモ下目をそれぞれ亜目として並列していました。しかし、現在の分類体系では、ハラフシグモ亜目が他のクモ類の姉妹群であるという知見に基づき、まずハラフシグモ亜目とクモ亜目を区別し、次にクモ亜目をトタテグモ下目とクモ下目に分けるという階層構造が採用されています。これはクモ類の進化を反映した分類体系と言えるでしょう。

まとめ

クモ亜目は、糸疣の位置、糸腺の種類、そして糸の利用方法において、多様な進化を示すグループです。腹部後端の糸疣は糸の操作性を向上させ、多様な糸腺は多様な糸の生産を可能にし、その結果として、複雑な網を張るクモや、様々な捕食戦略を持つクモなど、多種多様なクモ類の進化を支えています。トタテグモ下目とクモ下目の比較を通して、クモ類の進化における多様性と適応戦略を理解することができます。 クモ亜目の研究は、クモ類の進化の歴史と、その驚くべき適応能力を解き明かす重要な鍵となります。

参考文献

小野展嗣編著、『日本産クモ類』、(2009)、東海大学出版会
宮下直編、『クモの生物学』、(2000)、東京大学出版会

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