クライング フリー セックス

クライング フリー セックス

『クライング フリー セックス』（CRYING FREE SEX）は、2018年に製作された日本の短編映画です。主にファンタスティック映画の分野で数々の作品を手がけてきた岩崎友彦が監督・脚本・編集を務め、セックスコメディとアクションを融合させたユニークな作品として知られています。わずか15分という短い上映時間でありながら、「濃密な901秒の映画体験。」という印象的なキャッチコピーと共に注目を集めました。

制作背景とストーリー

本作の企画は、監督の岩崎友彦が長年にわたり温めていたアイデアが基になっています。しかし、そのあまりにも突飛な内容から、演じる俳優を見つけることが難しく、一時は制作を断念せざるを得ない状況でした。転機となったのは、岩崎監督の別作品に出演していた俳優の合アレンに企画を持ちかけたことです。合アレンがコメディを好み、かつ大胆な役柄にも抵抗がなかったことから出演を快諾。さらに彼女が、当時のパートナーであったマイケル・ファンコーニに共演を提案したところ、彼もまたコメディへの関心と、格闘技経験からくる身体能力の高さが買われ、出演が決まりました。結果的に、この二人の共演が本作の実現に不可欠な要素となりました。撮影はわずか3日間で行われましたが、その過程で生まれたアイデアも積極的に取り入れられています。なお、本作の撮影後に合アレンとマイケル・ファンコーニは入籍しています。

物語は、ある秘密組織に潜入していた工作員のコブラとナオミが主人公です。作戦遂行の朝、予期せず性的な行為に及びますが、アクシデントによってそのまま離れられなくなってしまいます。手錠や足かせではなく、性器が結合したままの状態となった二人は、ほとんど裸のまま、文字通り体がつながった「駅弁スタイル」で迫りくる敵と戦うことを強いられます。この極めて馬鹿げた、現実離れしたシチュエーションを、本作は真摯かつエンターテインメント性の高いハリウッド映画的な演出で描いている点が最大の特徴です。

公開と評価

『クライング フリー セックス』は、その異色の内容から国内外の映画祭で積極的に上映されました。ゆうばり国際ファンタスティック映画祭でのワールドプレミアをはじめ、ベルギーのブリュッセル国際ファンタスティック映画祭、韓国の富川国際ファンタスティック映画祭など、各地のファンタスティック系映画祭に招かれ、高い評価を得ました。スペインやスイス、アメリカでも上映されています。

映画祭での上映に加え、本作は短編映画としては極めて異例の単独での劇場公開が実現しました。2018年9月からは、新宿のK's cinemaを皮切りに、名古屋のシネマスコーレ、横浜のシネマ・ジャック&ベティ、大阪のシアターセブンなどで次々と上映されました。特にK's cinemaでの公開時は、連日多くの観客が詰めかけ、わずか15分の作品ながら満席の回が出るほどの盛況ぶりを見せ、合計1000人を超える観客を動員する成功を収めました。なお、本作は日本の映画倫理機構（映倫）の審査を受けていませんが、上映を行う各劇場による自主規制として、15歳未満の鑑賞を禁止する措置が取られました。

作品に対する評価も高く、著名な映画監督である西村喜廣や上田慎一郎らも賛辞を送っています。「くだらないのに多幸感がある」「ここまで欲望をストレートに出すか」といったコメントが寄せられ、インディーズ映画ならではの型破りな発想やエネルギーが称賛されました。また、アメリカの「おっぱいと血の国際映画祭」では、監督の岩崎友彦がBEST psychotronic short賞を受賞しています。

シリーズ化と関連展開

本作は単なる短編に留まらず、シリーズとして展開されました。岩崎監督は当初から本作を長編化するためのパイロット版と位置づけており、主演の合アレンも長編化に意欲を見せていました。その構想の一部が実現したのが、2019年製作の中編作品『クライング フリー セックス Never Again!』です。この続編はクラウドファンディングによる資金調達も試みられ、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭で上映された後、前作と併映される形で劇場公開されました。さらに、2022年にはシリーズの完結編となる長編作品『スペースクライングフリーセックス』（本編60分）が公開されています。

映画自体の公開と並行して、ユニークなコラボレーション企画も実施されました。東京都武蔵村山市の自動車整備工場「ネオライフ」のマスコットキャラクターとのタイアップや、新宿のバーでの期間限定オリジナルカクテルの提供など、作品の世界観を活かしたプロモーションが行われています。

『クライング フリー セックス』シリーズは、その極めて大胆な設定と、それを真面目に描き切るスタイルによって、国内外で話題を呼んだ異色のインディーズ映画として記憶されています。

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