クラリネット協奏曲 (ニールセン)

導入部

カール・ニールセンのクラリネット協奏曲 作品57（FS.129）は、1928年8月15日に完成した彼の最後の協奏曲です。オーケストラを伴う主要作品としても、ほぼ最後の位置を占めます。従来のニールセンの協奏曲とは異なり、本作は単一楽章形式で書かれている点が特徴です。

作曲の背景

ニールセンは1922年に親交のあったコペンハーゲン管楽五重奏団のために管楽五重奏曲を作曲し成功を収めた後、五重奏団員それぞれに協奏曲を捧げる構想を抱きました。フルート協奏曲に続くこの計画の第2弾として作曲されたのが本作です。同五重奏団のクラリネット奏者、オーゲ・オクセンヴァドに献呈され、1931年に出版されました。

楽曲の特質

この協奏曲は楽器編成が独特です。オーケストラの規模は小さく、管楽器はファゴット2、ホルン2、独奏クラリネット（イ調）、打楽器は小太鼓のみが使われます（ティンパニは使用されません）。この小規模な編成が、作品に濃密な室内楽のような響きをもたらしています。音楽はヘ調とホ調を中心に不安定に揺れ動き、時に衝突するような響きや、辛辣な表現が含まれています。

独奏パートとクラリネット観

独奏クラリネットのパートは非常に高度な演奏技術を要求します。献呈を受けたオクセンヴァド自身がその難しさに言及する逸話も残されています。ニールセンはクラリネットの音色について、「完全にヒステリーになったり、心を癒したり、油を差していないレールのよう軋んだりする」と述べたとおり、この楽器の単なる美しさだけでなく、その多様で複雑な性格を描写することを意図しました。

初演と当時の反響

本作は1928年9月14日に非公開で初演された後、10月2日にコペンハーゲンで公開初演されました。独奏はオクセンヴァド、指揮はエミール・テルマニーでした。初演後の評価は分かれました。『ポリティケン』紙は、作品が「クラリネットの魂」を解き放ち、その野性的で力強い側面を称賛し、オクセンヴァドの演奏がニールセンの着想源となった可能性を示唆しました。一方で、ヴィルヘルム・ペッテション＝ベリエルは独奏パートの表現を否定的に評するなど、発表当時はその革新性ゆえに賛否両論を呼びました。

構造

形式上は単一楽章ですが、内部は速度の変化によって「アレグレット・ウン・ポコ」「ポコ・アダージョ」「アレグロ・ノン・トロッポ」「アレグロ・ヴィヴァーチェ」といった4つの部分に分けられます。これらは伝統的な協奏曲の4楽章構成（ソナタ楽章、緩徐楽章、スケルツォ、フィナーレ）に対応していると解釈されることが多く、単一楽章の中に多様な性格が凝縮されています。演奏時間はおよそ25分です。

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