クリシギゾウムシの概要
クリシギゾウムシ(
学名:Curculio sikkimensis)は、ゾウムシ科に属する
昆虫で、特に
クリの
種子に被害を及ぼすことで知られています。
クリの実から登場するジムシ型の幼虫は、本種の若齢期であり、日本における
クリの害虫としては非常に重要な存在です。
特徴
この
昆虫は、他のゾウムシと比べて特に口吻が長いことが特徴です。
成虫の体長は口吻を除いて約10mm程度で、雌の方が雄よりも大きくなります。口吻の長さも性別によって異なり、雄が約3.5mmに対して雌は約8mmに達します。また、背面は濃褐色で、灰黄色の鱗毛が密生しています。触角や歩脚は赤褐色をしており、触角の基部は雄では口吻の中央から、雌では後方から出現します。
生活史
成虫は8月上旬から10月下旬にかけて出現し、最も多く見られるのは9月下旬です。
交尾後、雌は
クリの果実の表面にある棘の隙間から口吻を刺し、内部の
種子にアクセスします。そこで1個の
種子あたり、通常2〜8個の
卵を産み付けます。攻撃する果実の数は、雌1頭あたり10〜12個とされていますが、最大で19個の記録もあります。
卵は約10日で孵化し、幼虫は
種子の内部で成長します。幼虫は最初は乳白色で、成長するにつれて淡黄色になります。老熟した幼虫は、
種子の革に約3mmの穴を開けて脱出し、土に潜り込んで
蛹室を作り、そこで越冬します。
蛹は灰白色で、体長は約12mmです。通常はその年に羽化しますが、中には
蛹のまま冬を越すものもいるため、終生にわたって生存する個体もあります。調査によると、翌年に羽化するものが67%、2年後には28%、3年後には5%が羽化したという結果があります。
分布
クリシギゾウムシは、日本の
本州、
四国、
九州で見られるほか、国外では
朝鮮半島、
中国、
インドにも分布しています。寒冷地では個体数が多くなる傾向があります。
類似種
この
昆虫には、
コナラシギゾウムシ(C. dentipes)などの近似種が存在します。これに関しては林他編著(1984)において、4種の近似種が挙げられていますが、
クリに加害するのはこの
クリシギゾウムシのみです。形態的に似ているため、斑紋などで区別は可能ですが、正確には
交尾器の構造で見分ける必要があります。
食害と対応策
クリシギゾウムシは
クリの実を食害するため、非常に厄介な存在とされています。特に、日本の栽培栗においては最も重要な害虫の一つです。幼虫は
種子だけでなく、その内部に生成される糞も蓄積してしまうため、発酵し、不快な臭いを放つことがあります。また食害が進むと、外見にも色の変化が見られ、被害が分かりやすくなります。
卵が産み付けられた後、孵化しなくても食味に影響を及ぼすことがあります。収穫時期については、9月中旬以降に収穫される栗が特に被害を受けやすいです。これを受け、近年では早生の品種が食品業界でも好まれています。
かつては、燻蒸処理が一般的に行われていましたが、この方法はニホングリの香りを損なうことや環境への影響から避けられるようになり、現在は0度近くの高湿度での保存技術が主流となっています。
さらに、信州の一部では
クリシギゾウムシが食用とされており、フライパンで調理すると香ばしさと
クリーミーな味わいが楽しめるという利点もあります。これらの知識は、
クリ栽培や管理において重要な情報となります。