クリスタルズ (アメリカ合衆国のグループ)

ザ・クリスタルズ：輝ける軌跡と隠された真実

ザ・クリスタルズは、1960年代初頭にアメリカで活躍した女性ボーカルグループです。ニューヨークで結成された彼女たちは、プロデューサーであるフィル・スペクターの才能と、洗練されたハーモニーによって、数々のヒット曲を世に送り出しました。その華やかな成功の裏には、メンバー交代や、謎に包まれたレコーディング、そしてプロデューサーとの確執など、数々のドラマがありました。

華々しいデビューと初期の成功

1961年、バーバラ・アルストン、メアリー・トーマス、ドロレス・“ディーディー”・ケニーブリュー、マーナ・ジラード、パトリシア・“パッツィ”・ライトの5人で結成されたザ・クリスタルズは、すぐにフィル・スペクターのレーベルと契約。デビューシングル「ゼアズ・ノー・アザー・ライク・マイ・ベイビー」はビルボードチャートで20位を記録するなど、順調なスタートを切ります。「恋のアップタウン」もラジオでヒットし、人気を確固たるものにしていきました。その後、メンバーの変更を経て、1962年にはキャロル・キングとジェリー・ゴフィンが手掛けた「ヒー・ヒット・ミー」を発表。しかし、歌詞のセンシティブさからラジオでの放送は控えられ、チャートインには至りませんでした。

謎のレコーディングとダーレン・ラヴ

「ヒー・ヒット・ミー」の失敗後、スペクターはクリスタルズに「ヒーズ・ア・レベル」のレコーディングを指示しました。しかし、ニューヨークを拠点とするクリスタルズがすぐにロサンゼルスのスペクターのもとへ移動できない状況の中、スペクターは、ロサンゼルスにいたダーレン・ラヴと彼女のグループ、ブロッサムズにこの曲をレコーディングさせ、クリスタルズ名義でリリースするという決断を下しました。この曲は、本来クリスタルズが歌う予定ではなかったにもかかわらず、大ヒットを記録し、全米1位を獲得しました。この出来事は、クリスタルズのイメージを大きく変え、後のガールズグループにも影響を与えたと言えるでしょう。続く「愛しているんだもの」も、ラヴとブロッサムズが歌唱したバージョンがリリースされ、チャートの上位にランクインしました。

さらに、謎めいた「レッツ・ダンス・ザ・スクリュー」という、6分近い長尺で、当時としては異例な曲もレコーディングされましたが、リリースされることはありませんでした。このレコーディングに関しても、誰が歌っているのか、現在も不明な点が多く残されています。

本家クリスタルズの復活と新たなリードボーカル

「レッツ・ダンス・ザ・スクリュー」のレコーディング騒動の後、1963年には本家クリスタルズがレコーディングに復帰します。しかし、この時点でメアリー・トーマスは脱退。リードボーカルを務めていたバーバラ・アルストンに代わり、“ラ・ラ”・ブルックスがリードボーカルに抜擢されました。彼女たちは「ハイ・ロン・ロン」という代表曲を世に送り出し、アメリカとイギリスの両チャートでトップ10入りを果たします。続く「キッスでダウン」は、グループ全員が参加したレコーディングとなり、再び成功を収めます。

プロデューサーとの確執とグループの終焉

しかし、ヒット曲を連発していたにもかかわらず、ダーレン・ラヴとの件、ロイヤリティの問題、そしてスペクターが他のグループに注力するようになったことなどから、クリスタルズとスペクターの関係は悪化していきます。1964年以降はヒット曲に恵まれず、グループはフィリーズ・レコードを去り、他のレーベルに移籍。その後、メンバーの脱退が続き、1967年には一旦解散しました。

再結成と現在

しかし、1971年に再結成を果たし、現在もオリジナルメンバーであるケニーブリューを中心に活動を続けています。ザ・クリスタルズは、音楽史に残るガールズグループとして、その名を永遠に刻み込むことでしょう。彼女たちの音楽は、時代を超えて人々を魅了し続け、多くのアーティストに影響を与え続けています。

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