クリスタル・ジャパン (曲)

クリスタル・ジャパン

「クリスタル・ジャパン」（Crystal Japan）は、イギリス出身の多才なミュージシャン、デヴィッド・ボウイによって制作されたインストゥルメンタル楽曲です。この曲は1980年に、日本国内でのみシングル盤として特別にリリースされました。歌唱を伴わないこの楽曲は、当時の日本においてボウイの新たな一面を示すものとなりました。

楽曲の背景と制作

この楽曲は、当初から日本のCMのために書き下ろされたものではありませんでした。ボウイ自身の言葉によれば、1980年に発表されたアルバム『スケアリー・モンスターズ』の制作セッション中に作曲され、録音されたものです。セッション時の仮タイトルは「Fujimoto San」（フジモト・サン）と名付けられており、当初は『スケアリー・モンスターズ』の最後に収録される楽曲として検討されていました。しかし、最終的にこのアルバムには「イッツ・ノー・ゲーム (パート2)」が代わりに収められることとなり、「クリスタル・ジャパン」はアルバムから外される形となりました。

日本とのつながり：CMへの起用

「クリスタル・ジャパン」が日本で広く知られるきっかけとなったのは、宝酒造の日本酒「純」のコマーシャル・ソングとして使用されたことです。さらに、このCMにはデヴィッド・ボウイ本人も出演しており、その撮影のために彼は日本を訪れました。撮影は京都にある古刹、正伝寺で行われ、日本の伝統的な美とボウイの存在感が見事に融合した映像が生まれ、話題となりました。楽曲の持つ静謐でどこかオリエンタルな雰囲気は、日本の風景や文化、そして商品のイメージとも調和し、強い印象を残しました。日本限定でのシングルリリースは、このCMタイアップが大きな要因となっています。

その後の展開と再リリース

日本でのシングルリリース後も、「クリスタル・ジャパン」は様々な形で再発表されています。その後の主なリリース履歴は以下の通りです。

1981年：シングル「アップ・ザ・ヒル・バックワーズ」（Up the Hill Backwards）のB面に収録され、日本国外でも聴かれる機会が生まれました。
1982年：コンピレーション・アルバム『レア』（Rare）に収録されました。これはボウイのレアトラックを集めたアルバムであり、本楽曲の希少性が認識されていたことを示唆しています。
1992年：アルバム『スケアリー・モンスターズ』がCDとして再発された際に、ボーナス・トラックの一つとして追加収録されました。これにより、制作時期を同じくするオリジナルアルバムと関連付けられてファンに届けられました。
2001年：別のコンピレーション・アルバム『オール・セインツ』（All Saints）に収録されました。
2017年：世界巡回展「DAVID BOWIE is」が日本で開催された際、会場限定で特別な7インチ・シングルが販売されました。このシングルは、A面に「レディ・スターダスト」のデモバージョン、そしてB面に「クリスタル・ジャパン」が収録されたコレクターズアイテムとなりました。
2017年：ボウイのキャリアを俯瞰するボックス・セット『ア・ニュー・キャリア・イン・ア・ニュー・タウン (1977-1982)』（A New Career in a New Town (1977–1982)）にも収録され、この時期のボウイの音楽活動を包括的に紹介する中で再評価されました。

このように、「クリスタル・ジャパン」は、当初はアルバム未収録曲として日本限定で発表された楽曲ながら、その後の度重なる再リリースを通じて、時代を超えて多くの音楽ファンに聴き継がれています。インストゥルメンタルという形式でありながら強い印象を残し、デヴィッド・ボウイと日本の文化との稀有な接点を示す一曲として、その存在感を保ち続けています。

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