クリス・チブナル

クリス・チブナル：舞台から『ドクター・フー』へ至る脚本家の軌跡

クリス・チブナルは、イギリスを代表する脚本家、プロデューサーとして知られています。彼の名は、ITVの人気犯罪ミステリードラマ『ブロードチャーチ〜殺意の町〜』の制作・脚本によって広く知られるようになりましたが、その活躍は多岐に渡ります。

初期経歴と舞台活動

1970年生まれのチブナルは、フォームビーで育ち、トゥイッケナムのセントマリー大学で演劇を学び、シェフィールド大学で文学修士号を取得しました。Sky Sportsでの初期のキャリアを経て、映画製作会社Compliciteで管理職を務めた経験も持ちます。

彼の才能は早くから開花しました。1988年には、コンタクトシアターの若手劇作家フェスティバルで短編劇を発表し、大学時代にはエディンバラ・フェスティバル・フリンジで自身の作品を上演。その後、GRiPシアターカンパニーのライター・イン・レジデンスとして、複数の舞台作品を創作しました。中でも『Gaffer!』は2004年に再演されるなど、高い評価を得ています。Royal National Theatre StudioやSoho Theatreでの活動を経て、2000年にはアビゲイル・モリス監督のもと、キャサリン・マコーマックらが出演した『Kiss Me Like You Mean It』を創作し、高い評価を受けました。この作品は、世界各地で上演される成功を収めました。

テレビドラマへの転身と成功

チブナルのテレビドラマへの進出は、ITVの『ストーミン・ノーマン』の脚本から始まりました。その後、ナイジェル・マックレイとの共同制作による『Born and Bred』では、ヘッドライター兼プロデューサーとして番組を牽引。BBC Oneで4年間放送されたこの作品は、彼が36時間分のエピソードのうち17時間を担当した、代表作の一つです。

さらに、国際エミー賞を受賞した刑事ドラマ『Life on Mars』では、シリーズ2までの全脚本を担当。BAFTA視聴者賞受賞にも貢献しました。BBC Oneでは、ファミリードラマ『魔術師 MERLIN』の制作責任者も務めており、企画段階から深く関わっていました。他に『Law & Order: UK』、『CAMELOT 〜禁断の王城〜』などの制作にも携わっていますが、他のプロジェクトへの参加を優先する為、長期間の参加は避けています。2013年には二部作ドラマ『The Great Train Robbery』を執筆しました。

『ブロードチャーチ〜殺意の町〜』の大成功

チブナルの代表作の一つとして挙げられるのが、デイヴィッド・テナントとオリヴィア・コールマンを主演に迎えたITVの探偵ドラマ『ブロードチャーチ〜殺意の町〜』です。架空の町を舞台に展開する少年殺人事件の謎解きは、高い視聴率を獲得し、複数シーズンに渡って制作されました。

『ドクター・フー』への貢献

幼い頃から『ドクター・フー』の熱心なファンであったチブナルは、2005年にスピンオフシリーズ『秘密情報部トーチウッド』のヘッドライター兼プロデューサーに就任。このシリーズは、デジタルチャンネル放送における視聴者数の記録を更新する大ヒットとなりました。

『トーチウッド』の執筆と並行して、『ドクター・フー』本編にも複数エピソードの脚本を提供。2010年には二部作『ハングリーアース』『冷血』を、2012年にはシリーズ7の複数エピソードを手掛けました。そして2016年、スティーヴン・モファットの後任として、『ドクター・フー』の製作総指揮に就任することが発表されました。

製作総指揮就任後、彼は13代目ドクター役にジョディ・ウィテカーを起用。女性ドクターという革新的なキャスティングは、大きな話題を呼びました。2022年のBBC開局100周年記念スペシャルの制作後、製作総指揮を退任。後任にはラッセル・T・デイヴィスが就任しました。

まとめ

舞台からテレビドラマ、そして『ドクター・フー』というイギリスを代表するSFドラマの製作総指揮まで、クリス・チブナルは、多様な才能と豊富な経験で、常に視聴者を魅了する作品を生み出してきました。彼の今後の活躍にも期待が高まります。

もう一度検索