クリューズ

クルーズ（Cluses）

概要

フランス南東部、オーヴェルニュ＝ローヌ＝アルプ地域圏のオート＝サヴォワ県に位置するクリューズは、フォシニー地方を流れるアルヴ川沿いの渓谷に開けた魅力的な町です。スイスの主要都市ジュネーブと、世界的に有名なアルプスのリゾート地シャモニーの中間に位置しており、周囲を壮大なアルプスの山々に囲まれた自然豊かな環境にあります。この地の名前「クリューズ」は、フランス語で「狭い谷」を意味する単語"cluse"に由来しており、その地理的な特徴をそのまま示しています。

クリューズは、美しいアルプスの景観に加え、古くから栄えてきた精密時計製造業で特に知られています。

歴史

クリューズ周辺地域における人類の活動は、古代ローマ時代まで遡ります。アルヴ川に「ポンヴュー橋」が架けられたことにより、この地域は交通の要衝となり、交易が活発化しました。これを機に、山と川に挟まれた谷間の地形を利用して最初の集落が形成されたと考えられています。

中世においては、1310年5月4日に独立したコミューンとしての地位を確立しました。その後の町の発展には、この地を治めていたフォシニー男爵ユーグが大きく貢献したとされています。

クリューズの歴史において重要な転機となったのが、18世紀初頭の時計製造業の導入です。1720年、クロード＝ジョセフ・バラドゥーが、それまで主に農業が行われていたアルヴ峡谷で時計製造の事業を始めました。この事業は家族経営の工房などを中心とした家内工業として発展し、クリューズで作られた時計は、当時から時計産業の中心地であった隣接するジュネーブにも輸出されるほど高い評価を得るようになりました。時計製造は町の主要産業へと成長し、1848年には技術者育成のための「王立時計学校」が設立され、精密時計製造の技術水準はさらに高められました。

1844年6月20日、クリューズは大規模な火災に見舞われ、町の中心部にあったシャレー様式の木造建築はほぼ全て焼失しました。しかし、この悲劇からの復興において、町は当時のサルデーニャ王国の首都であったトリノの都市計画や建築様式を参考にして再建されました。このユニークな再建により、クリューズの街並みはオート＝サヴォワ県内の他の町とは異なる、独特で整然とした景観を持つことになりました。

経済と産業

かつて農業が主体であったクリューズの産業構造は、時計製造業の発展とともに変化しました。現在では、時計製造業が町の主要産業であり、その長い歴史と技術的な評価から、他の精密機械産業も集積しています。

人口

クリューズの人口は、コミューンが創設された1902年の2,208人から、産業の発展などを背景に増加傾向をたどりました。特に20世紀後半にかけて大きく増加し、1990年には16,732人に達しました。

交通

町の中心部にはフランス国鉄のクリューズ駅があり、ラ・ロシュ＝シュル＝フォロンやサン＝ジェルヴェ＝レ＝バン方面への列車が運行されています。地域の重要な公共交通機関として機能しています。

文化

クリューズおよび周辺のアルヴ渓谷では、音楽を中心とした文化イベントが開催されています。

フォシニー音楽祭: アルヴ渓谷に属する14の自治体が毎年持ち回りで主催し、6月の最終日曜日に開催される音楽祭です。地域の音楽振興に貢献したフランソワ・カートを記念して行われます。
Musiques en Stock: クルーズの町で毎年夏に開催される無料の音楽祭です。フォークロックやロックなど多様なジャンルの音楽が演奏され、国内外から多くの著名なアーティストやパフォーマーが参加することで知られています。

史跡

クリューズには、町の歴史を伝えるいくつかの重要な史跡があります。これらの多くはフランスの歴史的記念物に指定されています。

ポンヴュー橋: アルヴ川に架かる石造りの美しいアーチ橋です。現在の橋は1674年に建設されたもので、古代からの交易路における重要な地点であり、地域の歴史的遺産として保護されています。
王立時計学校: 1848年に設立された、クリューズの精密時計産業を支えた技術者養成機関です。建物は1890年代に技術高等学校に改組された後、1989年に閉鎖されましたが、現在もリセ・シャルル＝ポンセの校舎として使用されており、歴史的記念物として価値が認められています。
クリューズの泉: アロブロージュ広場に設けられた噴水です。町の歴史的な景観の一部であり、こちらもフランスの歴史的記念物に指定されています。

姉妹都市

クリューズは、国際交流を深めるため、以下の都市と姉妹都市提携を結んでいます。

ドイツ、トロッシンゲン
アメリカ合衆国、ビーバートン
カナダ、ラシュート

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