クリームヒルト

クリームヒルトについて

クリームヒルト（ドイツ語: Kriemhild）は、中世ドイツの叙事詩『ニーベルンゲンの歌』に登場し、英雄ジークフリートの妻として知られています。彼女のキャラクターは物語の前半と後半で大きな変化を見せ、これには一説に、二人の異なる人物が統合された結果であるとされています。

名前の表記と起源

『ニーベルンゲンの歌』におけるクリームヒルトの名前は、古いドイツ語や北欧文献に様々な形で現れます。中期高地ドイツ語ではクリエムヒルト（Kriemhilt）、現代ドイツ語ではクリームヒルトと表記されます。また、北欧の伝承に見られる古ノルド語表記ではグズルーン（Guðrún）や現代ドイツ語のグートルーン（Gudrun）などの名前も存在します。これにより、彼女のキャラクターには国や時代を超えた広がりがあることがわかります。

物語の前半

物語の初めでは、クリームヒルトはブルグント王グンターの妹であり、勇敢なニーデルランドの王子ジークフリートの妻となります。しかし、義妹であるブリュンヒルトとの確執が彼女の運命を大きく変えていくことになります。二人は「どちらの夫が偉大であるか」で激しく意見を交わし、その中でクリームヒルトはジークフリートがグンター王の求婚を手助けした事実を暴露します。この暴露はブリュンヒルトの名誉を傷つけ、結果的にジークフリートはブリュンヒルトの復讐によって命を奪われてしまいます。

クリームヒルトは夫の死後、13年間も喪服を欠かさず悲しむことになりますが、その間に彼女はニーベルンゲンの財宝を手にし、多くの人々に施しを行うことで人気を得ました。しかし、ハーゲンという側近の策略によって、財宝は川の底に隠され、彼女の復讐の手助けとなることは許されませんでした。

物語の後半

フン族の王エッツェルがクリームヒルトに求婚し、最初は拒んでいた彼女も、復讐を果たすため再婚する決断を下します。フン族の王妃として彼女は数年間、穏やかに暮らしますが、次第に復讐の計画を練るようになります。自らの兄やその仲間を招く口実で再会を果たしたいと考え、彼女は兄グンターを招待します。そこには叔父のハーゲンは呼ばないよう細心の注意を払います。

招待を受けたグンターとハーゲンは、当初は争いの意図は持たずにフン族の宮廷へ赴きますが、クリームヒルトの野心的な計略は次第に明るみに出ていきます。内部での陰謀やトラブルが繰り広げられる中、彼女の復讐心はますます強まり、最終的にはハーゲンとグンターとの激闘が繰り広げられます。彼女が望んでいたハーゲンの首を求める際、他のブルグントの者たちと彼女の間の確執も深まります。

復讐と運命の終焉

最終的に、ハーゲンを追い詰める中で、クリームヒルトは彼にニーベルンゲンの宝の隠し場所を白状させようとしますが、ついにはグンターを手にかけてしまいます。この行為によって彼女は不可逆な悲劇に巻き込まれ、自らもフン族の闘士に命を奪われる運命を辿ります。彼女の復讐は報われず、悲劇的な結末を迎えることとなります。

文化的意義と後の評価

『ニーベルンゲンの歌』の続編ではクリームヒルトの行動に対する弁護が行われており、彼女の人物像は今なお多くの文学作品に影響を与えています。彼女の物語は父権制や復讐、欲望と失望といったテーマを内包しており、後世においても語り継がれる重要なキャラクターとして位置づけられています。

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